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2023春闘賃上げ結果は?中小企業や電気連合・自動車総連など注目連合の傾向と結果は?

2023.05.26

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春闘は労働条件の向上について、労働者と労働者を使用する立場である企業が話し合う場です。中でも、春闘の注目ポイントはいわゆる「ベア」。「賃上げについて」といっても過言ではないでしょう。春闘の概要や2023春闘では賃上げについてどのような結果が出たのかなどを、経済界全体、各業界の傾向を踏まえながら解説します。また「そもそも春闘とは何か」「春闘での論争のポイント」「毎年多くの企業が春闘の結果として改善するポイント」なども紹介します。

2023春闘の特徴

毎年、春闘を迎えるにあたり、さまざまな業界や企業、連合でキャッチフレーズが決められます。キャッチフレーズには世相も反映されますが、業界や業種、社会的な立場によって、それぞれ特徴があります。

2023年春闘に向けたキャッチフレーズでは、全国の地方公務員で構成される全日本自治団体労働組合では「人が紡ぐ 人が育てる 公共サービス」を公募で大賞作品に選びました。金融機関の労働組合が加入する全国金融労働組合連合では以下の3点が2023年春闘のキャッチフレーズとして発表されました。

「勝ちとるぞ 大幅賃上げ 23春闘!」
「ノルマ、パワハラ無くして笑顔の職場 笑顔でつなごう地域の輪」
「物価上昇に合わせ 賃金の底上げを勝ち取ろう 23春闘!」

賃上げは、毎年の春闘のメインテーマでもありますが、近年の急速な物価高から賃上げへの声が熱を帯びていることもキャッチフレーズから読み取れます。

春闘前から従業員にインフレ手当を支給したり、賃金を上げたりする企業も目立つなか、2023年の春闘が開幕しました。また、2023春闘では すべての労働者の立場にたった「働き方」の改善やジェンダー平等、多様性の推進に向けた取り組みについても多くの争点が生まれました。

こうした世相も受け、2023年の春闘の結果がどのようなものかをご紹介する前に、春闘とは何か、論点や歴史などについて解説しましょう。

参考:https://www.jichiro.gr.jp/
参考:http://www.kinyu-roren.jp/

そもそも春闘とは?

春闘とは、毎年春に行われる労働者と企業(使用者)である労使双方が賃金や労働条件の改善について話し合うイベントのことです。春闘は正式名称を「春季生活闘争」とし、略して「しゅんとう」と読みます。「2023春闘」とは、2023年度春に2023年の労働条件について労使双方が討論したものです。

春闘は、主に労働者側からすると「労働者の権利保護」「賃金の適正化」、企業側からすると「生産性向上」を巡る討論の場です。春闘は日本のビジネスシーン特有の文化であり、主に労働組合(単組)と企業間での交渉がメインとなるため、労働組合を有する大企業や業界が主役と考えられています。

しかし、各年度の春闘で出た結果が、日本経済全体の労働条件のベースとなるため、中小企業、パートやアルバイト、業務委託などの非正規雇用者にも影響があります。春闘のスケジュールや意義、歴史について、独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料「春闘を中心とした賃金交渉の経緯 ―― 転換点にあたって労使はどう動いたのか ―」を基に解説します。

参考:https://www.jil.go.jp/
参考:https://www.jil.go.jp/kokunai/chingin/documents/e-report_01.pdf

春闘のスケジュール

毎年春闘は、新年度を迎える4月からの労働条件を巡った討論となるため、労働組合は企業に2月までに要求を提出します。企業からは、3月中に回答が出るのが通例です。ただし、単体の労働組合やひとつの企業だけで、正しい判断を下したり要求を通したりするのは負担が大きく偏りもでるため、多くの場合、業界や業種ごとに連合を組み春闘に挑むケースが多いです。

そのため、労働者側は前年の夏から要求の内容について議論を重ね、同年の12月には方針を決定し、方針発表や連合への提出を終えます。その後、各産業別に連合が全体方針に基づいた具体的な要求水準を決定し、企業の労働組合に戻すのが通例です。連合が決めた要求水準に沿って、各労働組合は要求を最終決定し、企業へ提出します。

春闘の歴史

厚生労働省の資料によると、現在の春闘の形式は1956年(昭和31年)から始まったとされ、半世紀以上の歴史があります。春闘が生まれた背景には、戦後のビジネスシーンの混乱や労使のパワーバランスの不均衡などが絡んでいます。労働者が不利益な環境や不健全な労働を強いられずに済むよう、春闘が生まれたのです。

春闘が生まれる以前は、労働者や労働組合は、企業との交渉を勝ち取るためにデモやストライキを行っていました。デモやストライキなどの直接行動に出ることで、サービスや商品の生産が滞り、企業や経済界は経済的打撃を受けました。労働者側からしても、企業の生産性を落としてしまえば賃上げをはじめとする労働条件の改善が困難になり、労使双方にとってダメージを受けます。

結果として生まれたのが、労使が双方への改善要求を示し話し合う春闘です。春闘は、いわば労使双方の公式交渉として生まれたイベントであり、労働者だけでなく企業や日本経済を守ることにもつながっています。

【2023春闘まとめ】そもそも春闘とは?争点は賃上げ?2023の動向や回答と結果をまとめて紹介!

春闘の具体的な内容

春闘で交渉される争点には、各年度による大幅な変更はありません。春闘では、主にどのような内容が話し合われるのか、近年の傾向も含め具体的に見ていきましょう。

賃金の向上(ベア)

春闘で議題のメインとなるのは、一定の賃金アップです。この賃金アップは、基本給の引き上げ、つまり社会全体の給与水準の引き上げであることから「ベースアップ」と呼ばれ「ベア」と略されます。年齢や勤続年数、成績などをもとに給与がアップする定期昇給やインセンティブ、ボーナスなどの賞与とは別物です。

ただし、春闘を受けて決まった賃上げ率は、所定外手当や賞与にも影響があります。賃上げ率とは、春闘に参加した労使双方が妥結した平均の賃金引上げ率のことです。日本では多くの企業が、その年の所定給与を基に所定外手当や賞与額を決定するため、年収にも深く関わります。

また、ベアは、春闘に参加していない中小企業の給与水準にも影響するため、毎年注目されます。今後の労使の関係性や方向性をも左右しかねない重要な項目です。ベアは企業の業績だけでなく、景気の動向や社会情勢などからも影響を受けます。近年は長年にわたる日本経済の低迷、人材確保などの観点からも喫緊の課題として春闘で取り上げられています。

福利厚生の充実

春闘では、労働環境の改善などについても交渉されます。労働組合などから労働環境改善に向けた課題のひとつとして福利厚生の充実が求められることもあります。春闘が始まった1950年代から職場環境の改善を求める声はありましたが、近年は健康経営の視点から従業員の心身の健康作りを支援する福利厚生や、人的資本経営の視点から従業員の育成やスキルアップにつながる福利厚生などを求められるケースも増えつつあります。

株式会社エデンレッドジャパンが2020年に行った、ビジネスパーソンと企業を比較した「働き方・待遇に関する意識調査」では「今後、待遇・働き方について自社に望むこと」という質問に対し、全国の中小企業に勤める30~50代の正社員男女600名の回答者が「基本給のアップ」「賞与額のアップ」「手当の充実」といった金銭面の次に「福利厚生の充実」を望んでいるという結果が出ました。

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出典:株式会社エデンレッドジャパン 「働き方・待遇に関する意識調査」

そこで、おすすめなのが電子カード配布型の食事補助サービス「チケットレストラン」です。特筆すべきなのは、チケットレストランの便利さです。導入企業での利用率99%・継続率98%・満足度90%と重宝している様子がうかがえます。チケットレストランへの加盟店は、2023年5月現在25万件を超えています。

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また、チケットレストランの導入により期待できる効果として、どのような働き方をする従業員でも「会社は自分の健康や生活に配慮してくれている」と感じてもらうことが挙げられます。ワークエンゲージメントにつながり、従業員のメンタルヘルスや企業と労働者の関係性にも良い効果があるでしょう。資料請求はこちら

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賞与アップや支給の有無

福利厚生の充実とともに、待遇改善の一環として春闘で取り上げられるのが賞与です。賞与は定期的に支給される給与とは異なり、企業の業績や従業員個人の成果などによって支給の有無や支給額が変化します。

春闘では、主に賞与の支給の有無や夏と冬などの賞与額の配分が交渉されます。原則として春闘は、労働組合を有する大企業や業界に勤める従業員が企業との労働条件交渉をする場なので、中小企業には関係がない話と考えている企業や人も少なくありません。

しかし、春闘を経て示された、大企業や主要業界の賞与に対する姿勢は、社会全体に影響を与えます。中小企業に勤める従業員や非正規雇用の従業員の賞与も春闘の結果に影響されるため、メディアで大きく扱われるなど社会全体の関心を集めています。

労働時間の見直し

現在企業には、従業員のワークライフバランスの充実や健康維持、改善に対する責任が問われています。労働時間の実情の洗い出しや見直しも、春闘で交渉される争点です。

原則として労働基準法で定められている労働者の労働時間は「1日8時間、1週間では40時間以内」です。近年、働き方改革により長時間労働の見直しや労働時間短縮への奨励も行われていますが、実際には時間外労働による長時間労働が常態化する企業が多いです。

過労死や過重労働によって引き起こされた労働者の健康問題などのニュースがメディアを騒がせる中、労働時間短縮についての春闘での議論も熱を帯びています。残念なことに、こうした動きにより従業員の時間外労働を記録させないサービス労働を常態化させる企業もあるため、今後の春闘では「法定の労働時間を企業がどう徹底するのか」が焦点になると見られています。

非正規雇用の待遇改善

アルバイトやパート、契約社員など有期雇用契約などを結ぶ非正規雇用者の労働力は、多くの企業にとって、なくてはならない屋台骨です。しかし、非正規雇用の労働者に対して、同じ企業内でも正規雇用の正社員に比べて賃金や福利厚生面での労働条件を著しく不利に設定する企業もあります。

非正規雇用者の労働力に支えられている業界や企業では、不平等な待遇が全体の生産性をも揺るがしかねません。春闘でも「同一条件同一賃金」に代表される、非正規雇用の待遇の見直しが、近年の大きなテーマとなっています。

2023春闘の結果

日本労働組合総連合会が2023年5月8日に発表した「中小組合の奮闘で「賃上げの流れ」の広がりが明らかに ~2023春季生活闘争 第5回回答集計結果について~」を基に2023春闘を受けた賃上げの結果を紹介します。中小企業や非正規雇用者について、注目業界についてもそれぞれ紹介します。

全体の賃上げ結果

4,833組合が要求した月例賃金改善案については76.2%の3,686組合が妥結しました。内訳では、賃金改善を獲得した組合は2,146組合(58.2%)をマークし、ここ10年で最も高い水準です。 3,681組合が妥結した平均賃金方式では平均で10,923円(3.67%)、昨年同時期比4,763円(1.57ポイント増)の賃金アップを獲得しました。

うち、賃上げ分が明確に分かる2,518組合の賃上げ平均額は6,047円(2.14%)、うち中小組合1,500組合は5,104円(2%)増を獲得しています。4月末時点で2%を上回ったのは、賃上げ分の集計を開始した2015闘争以降初めてだそうです。

さらに3月15日の集中回答日を受け、大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%と、前年より1.64ポイントも上昇したと伝えられています。賃上げ率3%以上をマークするのは、実に30年ぶりという今春闘の好結果に対し「インフレの影響はあるものの、低迷していた日本経済も活気を取り戻す」と評価する専門家もいます。

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中小企業の賃上げ結果

今年度の春闘に参加した連合団体のうち、300人未満の中小組合は2,478組合です。賃上げ結果として8,328円(3.35%)増を獲得しました。4月末時点の結果としてはいずれも、2013闘争以降、額・率とも最も高い賃上げの流れを示しました。

非正規雇用者への賃上げ結果

有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、平均で時給56.48円(同31.94円)、月給8,849円(同3,773円)増となりました。これは、正規雇用労働者への増加率を上回るとともに2015闘争以降で最も高い結果です。

最低賃金も2002年度以降最大の上げ幅となり、全国平均で28円を目安に引き上げられました。 2023年度も例年と同様に、10月を目処に最低賃金の引き上げ実施が期待されています。

参考:https://www.jtuc-rengo.or.jp/about_rengo/

電機連合と自動車総連が獲得した賃上げ結果

知名度やブランドを持つ、多くの国内ナショナル企業の労働組合が所属する、電機連合(全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会)と自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)は2023春闘を経て、どのような結果を得たのでしょうか?日本労働組合総連合会が発表した「連合 2023春季生活闘争 共闘連絡会議「回答速報」No.21」を基に電気連合と自動車総連の賃上げ結果を紹介します。

 

電機連合の賃上げ結果

大手電機メーカーの労働組合が所属する電機連合は、2023年の春闘に向けてベア相当分として月額7,000円の賃上げを要求しました。論争を続ける中、大手12社の労働組合では、月額5,000円以上を受け入れの最低水準とする方針を決めましたが、これは2022年春闘の最低水準1,500円を3,500円も上回る高水準です。ここまでの高水準は実に25年ぶりということで注目が集まりました。

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出典:労働組合総連合会 連合 2023春季生活闘争 共闘連絡会議「回答速報」No.21

これに対し、ほぼすべての大手メーカーが満額の月額賃金7,000円アップと回答しました。この結果の理由としては、人材確保のための投資や急激な物価高騰の影響が考慮されたと見られています。この電機連合の賃上げ結果がどのように中小企業の賃上げに影響していくかが社会的に注視されています。

自動車総連の賃上げ結果

自動車業界の労働組合でつくる「自動車総連」が発表した各企業からの回答状によると、大手12社のすべてで、月額賃金や賞与を含めた給与を底上げするベアの姿勢を企業側から示されました。

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出典:労働組合連合会 連合 2023春季生活闘争 共闘連絡会議「回答速報」No.21

また、このうち9社が満額回答、3社は月額と賞与でバランスを取り満額に近い回答を出しました。現時点で、ベアを実現した組合の割合は、2014年以降で最高と見られています。

自動車総連が発表した「2023年総合生活改善 第5回中央戦術委員会」を基に全体をみると、4月23日までに賃金・年間一時金等について妥結または妥結方向に至った組合は、全体の75.3%にあたる783組合にのぼりました。

月例賃金 ・個別賃金については、665組合が要求し143組合が回答しています。平均賃金は、全体の引き上げ平均額は   8,715円です。賃金改善分の獲得割合は91.8%、平均獲得額は5,253円となっており、地域や業種によって違いはあるものの、賃金引き上げの流れが着実に広がりを見せています。

287組合が企業内最低賃金の水準の引き上げを公表しており、その平均額は170,144円と、前年同時期の166,411円を大きく上回っています。 年間一時金については、698組合における年間回答月数の平均は4.6ヵ月と なっていおり、こちらも前年同時期発表の4.51ヵ月を上回っています。553組合は前年以上を回答したほか、そのうち40%を超える293組合が5ヵ月以上を獲得しています。

非正規雇用者への処遇改善に取り組んだ組合は506組合であり、4月23日時点で243組合が何らかの前向きな回答を得ています。内訳をみると、賃金向上の平均額は時給35.4円であり、月額換算すると現時点で  正規組合員を超える賃金改善額となっている。 

これら、春闘での賃上げについての回答を実現、持続可能とするために自動車産業では、価格転嫁などの企業間取引に関する取り組み、原資の確保やグループ全体の競争力の引き上げに向けた取り組みを組織の枠組みを超えて共有、検討しています。

多くの業界で賃上げ要求が叶った「2023春闘」結果を受けて

2023春闘では、賃上げ要求を受け、ほとんどの業界、企業で近年まれにみるベアアップの回答を得ました。これを受け、パートやアルバイト、有期雇用契約社員など非正規雇用の社員の時給や賞与もアップすることが見込まれています。

しかし、中小企業や小規模事業所などでは、こうした賃上げ結果を反映するのがむずかしいケースもあるでしょう。そうした場合は、助成金や税制の優遇措置が適応される福利厚生サービスを導入し、従業員の待遇改善を図るのがおすすめです。導入、運用が簡単でスムーズな「チケットレストラン」導入を検討しましょう。

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