チケットレストランブログ働き方改革[社労士監修]働き方改革関連法とは?改正のポイントと企業が取るべき対策

[社労士監修]働き方改革関連法とは?改正のポイントと企業が取るべき対策

働き方改革

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監修者:森田修(社労士事務所 森田・ミカタパートナーズ)
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近年、日本ではフレックスタイム制の導入及び、リモートワークなど多様な働き方が浸透しつつあります。政府も働き方改革を推進しており、企業への呼びかけと共に関連法を成立させました。法律の施行により、企業では関連法に沿った職場環境の整備が必要です。

なお関連法に関しては、違反すると罰則の対象となる場合もあります。企業の担当の方は、働き方改革の関連法について理解を深めておきましょう。

働き方改革の関連法とは?

働き方改革関連法案(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)は、8つの労働法を改正するための法律です。法律が成立したことにより、該当する労働法の改正が行われました。

日本では以前より、長時間労働や働く従業員の職場環境の改善が課題となっています。実際に労働が原因で精神疾患、および過労死をしてしまうケースも発生しています。しかし法律の規定もあり、思うようには改善が進みませんでした。

事態を重くみた政府は働き方の改革に乗り出し、2018年4月には当時の安倍内閣が閣法として国会に提出しました。野党などの反対はあったものの、同年6月29日に法律が成立し7月6日に公布されています。

働き方改革関連法の施行スケジュール

関連法は、2019年4月より施行されています。大半の関連法は2019年4月から施行が開始されていますが、一部の法律や企業の規模によっては施行日が異なります。

例えば時間外労働の上限規制です。大企業では2019年4月から施行が開始されましたが、中小企業は1年後の2020年4月から施行となりました。また不合理な待遇差の解消規定および労働条件の説明義務は、大企業は2020年4月から施工、中小企業は1年後の2021年4月から施行となりました

なお中小企業の割増賃金率の引き上げについては、2023年4月より施行される予定です。詳しい施行スケジュールに関しては、厚生労働省「働き方改革関連法等について/各改正事項の施行・適用時期(PDF)」をご参照ください。(※1)

働き方改革関連法により改正される法律

関連法の成立により、8つの労働法の改正が行われました。改正が行われた法律は、以下のものです。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  • じん肺法
  • 雇用対策法
  • 労働契約法
  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律

なお改正された項目に関しては、企業も遵守しなければなりません。法律に違反すると罰則の対象となる場合もあるため、対応が必要な項目に関してはきちんと理解しておきましょう。

人事・労務担当が注目すべき3つの法改正ポイント

法改正には、おさえておくべきポイントがあります。特に下記の3つについて人事・労務担当の方は、必ず把握しておきましょう。

時間外労働の上限規制

関連法の成立により、時間外労働は原則として月45時間、年間で360時間までとなりました。臨時的な特別な事情がある際には、上限を超えた時間外労働も可能ですが、労使協定の合意(特別条項)が必要です。

ただし特別条項を結んだとしても年720時間、月100時間を超える時間外労働を課すことはできません。特別条項を結んでも月45時間を超えた労働は年6カ月まで複数月平均80時間までと規定されています。この考えは少し難しいのですが、特別条項適用月からさかのぼって2か月から6か月の期間の平均の時間外労働が休日労働も含めて80時間以内でなければならないというルールです。具体例を挙げて説明します。

例えば、2022年4月1日から2023年3月31日までの期間について36協定を締結し、2022年10月に特別条項を適用した場合、次の5つの要件をすべて満たすことが必要になります。

  1. 2022年9月と2022年10月の2か月間の時間外労働・休日労働の平均が80時間以下
  2. 2022年8月~10月の3か月間の時間外労働・休日労働の平均が80時間以下
  3. 2022年7月~10月の4か月間の時間外労働・休日労働の平均が80時間以下
  4. 2022年6月~10月の5か月間の時間外労働・休日労働の平均が80時間以下
  5. 2022年5月~2020年10月の6か月時間外労働・休日労働の平均が80時間以下

上記に違反した場合には6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。(※2)

年次有給休暇取得の取得義務

有給休暇の取得義務も、おさえておきたいポイントです。関連法の成立により、企業には従業員の有給休暇の取得が義務化されました。そのため企業は、年10日以上の有給休暇を付与された従業員に対して、年に5日以上の休暇を取得させなければなりません。違反したときは、30万円以下の罰金が科せられます。

なお取得義務は雇用形態に関係なく、雇用する全ての従業員に適用されます。アルバイトやパートの従業員に対しても、年10日を超える有給休暇が付与されていれば、取得義務の対象です。(※3)

同一労働同一賃金

雇用する全ての従業員に対して、公平な待遇を定めた規定です。法律の成立により、不合理な待遇差を設けることができなくなったため、雇用形態で待遇に差をつけることはできません。

例えば正社員に通勤手当を支給していれば、パートやアルバイトの従業員に対しても、同じ条件で手当てを支給する必要があります。賃金に差をつける場合には、合理的な理由が必要です。

なお同一労働同一賃金に関しては、明確な罰則規定は設けられていません。しかし不合理な待遇が認められた場合には損賠賠償の請求、および正当な賃金の支払いなどが求められる可能性があります。悪質と認められた際には、是正指導の対象となる場合もあるため注意が必要です。

その他の改正ポイント

関連法には、上記以外にも知っておくべきポイントがあります。その他のポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。違反する罰則の対象となる場合もあるため、人事担当者様などは把握しておきましょう。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、就業時間を従業員が決定できる制度のことです。従業員は労使協定で決められた清算期間であれば、企業が規定した範囲内で自由に働けます。フレックスタイム制では、コアタイムとフレキシブルタイムを設定するのが一般的です。

コアタイムは必ず働かなければならない時間帯であるのに対し、フレキシブルタイムは従業員が自由に決められる時間帯をいいます。フレキシブルタイムの時間帯であれば、従業員は好きな時間に出社・退社が可能です。

なおフレックスタイム制は法律の改正により、清算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に延長されました。調整できる期間が長くなったため、より柔軟な働き方が可能です。(※4)

勤務間インターバル

勤務間インターバルとは業務終了後、次の勤務を開始するまでに、一定の休憩時間を設ける制度です。法律の改正により、企業の努力義務となりました。この施策は従業員の生活時間、および睡眠時間の確保が主な目的です。なお設定すべき休憩時間については、明確に規定されているわけではありません。ただし厚生労働省のガイドラインでは、EU指令の措置である11時間のインターバルが紹介されています。自社で制度の導入を検討する際には、ひとつの目安として参考にするとよいでしょう。(※5)

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、定められた条件を満たした労働者に対し、労働時間などの制限を撤廃できる制度です。対象となる職種・業務に該当、かつ年収が1075万円を超える労働者が対象となります。企業がこの制度を適用するには、以下3つの条件を満たすことが必要です。

  • 労使委員会の設置・決議
  • 決議内容を所轄労働基準監督署に届け出る
  • 従業員本人の同意を得る

制度が適用された従業員は働いた時間ではなく、得られた成果で評価されます。そのため時間外労働、および休日労働による割増賃金の支払い義務が適用されません。しかし、年104日以上の休暇措置および従業員の健康状態に応じて、健康・福祉確保措置などを講じる必要があります。(※6)

産業医の権限を強化

法改正では、産業医への権限および情報提供の充実・強化も盛り込まれています。この制度は長時間労働や精神的な不調により、健康リスクが高い労働者を見逃さないことを目的としたものです。企業は産業医が円滑に業務を進められるように、体制や設備を見直さなければなりません。また産業医から勧告があった際には、勧告に対する措置を講じ、遅滞なく衛生委員会などに報告する必要があります。(※7)

中小企業における時間外労働60時間超えの割増賃金率の引き上げ

現在、大企業の時間外労働における割増賃金率は、月に60時間以下で25%以上、月に60時間を超えるときは50%以上となっています。一方で中小企業の時間外労働における割増賃金率は、60時間を超えたとしても25%以上です。

しかし法改正により、中小企業の割増賃金率が引き上げられることになりました。そのため中小企業でも、2023年4月から月に時間外労働が60時間を超える場合には、割増賃金率が50%以上になります。(※8)

働き方改革関連法により企業に求められる対応

働き方改革の関連法により、企業でも適切な対応を行わなければなりません。企業に求められる対応としては、主に以下のものが挙げられます。

適切な勤怠管理

まずは勤怠管理を適切に行うことです。今回の法改正では、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務など、勤怠に関する内容が盛り込まれています。法律を遵守するためには、漏れや誤りなどがないように、正確に勤怠を管理することが必要です。特に定期的にシフトを作成するときなどは、法律で定められた上限を超えないように、ゆとりをもったシフトを作成するようにしましょう。

なおシフト変更が頻繁にある場合、または従業員数が多い企業などでは、勤怠管理が煩雑になりがちです。このようなときには、勤怠管理システムの導入を検討してみてもよいでしょう。

働く環境の整備

働き方改革や関連法に対応するためには、働く環境の整備も重要です。近年では働き方も多様化しており、企業にも柔軟な働き方ができる職場環境づくりが求められます。まずは就業規則を見直し、現状に合っていないものがあれば、撤廃または改善を検討してみましょう。自社の現状によっては、フレックスタイム制などを導入できる可能性があります。

また福利厚生を充実させることも、有効な取り組みです。福利厚生に関心がある労働者も多く、なかには就職活動のときに判断材料のひとつとする方もいます。加えて福利厚生を充実させることは、従業員のモチベーションも見込めます。従業員のモチベーションがアップすると、意欲的に業務に取り組んでくれる可能性があり、生産性の向上にも期待できるでしょう。

福利厚生を充実させることにも触れてください。

さいごに

働き方改革関連法のポイントを紹介しました。

働き方改革は従業員のワーク・ライフ・バランスにおいて、重要な役割を担うものです。関連法も改正され、企業に対しても適切な対応が求められます。法律に違反すると罰則が科せられるだけでなく、従業員のモチベーションや生産性にも影響を及ぼします。

そのような事態を防ぐには、法律の概念を理解して就業規則の見直しなどを図ると共に、従業員が働きやすい職場環境づくりに努めましょう。

参考資料:
働き方改革関連法のあらまし (改正労働基準法編)

(※1)「働き方改革関連法等について|各改正事項の施行・適用時期/厚生労働省

(※2)「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|Ⅰ法令解説編 改正内容(時間外労働の上限規制)/厚生労働省

(※3)「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|Ⅰ 法令解説編 1.年次有給休暇の付与や取得に関する基本的なルール, 2.年5日の年次有給休暇の確実な取得/厚生労働省

(※4)「フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き|Ⅰ 法令解説編 1.フレックスタイム制とは, 2.改正内容(フレックスタイム制の清算期間の延⻑等)/厚生労働省

(※5) 「労働時間等設定改善法 労働時間等見直し ガイドラインについて|Ⅲ. 勤務間インターバル制度について/厚生労働省

(※6)「⾼度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説|冒頭 ⾼度プロフェッショナル制度とは,決議事項1 対象業務, 決議事項2 対象労働者の範囲(※3)/厚生労働省

(※7)「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます/厚生労働省

(※8)「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|◆改正のポイント/厚生労働省