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【社労士監修】働き方改革とは?取り組みや関連法をおさらい

2022.05.09

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)


働き方改革についてどのような取り組みかご存知ですか?
ワーク・ライフ・バランスを整えられるよう職場環境を改善していくものなど、漠然としたイメージだけでとらえていませんか?実は法改正によって企業に義務付けられた施策もあり、義務違反を犯すと知らなかったでは済まされない罰則もあるのです。

今回は、政府が進めている働き方改革について具体的に何を目的とし、企業はどのような対策を行えばよいのかを解説していきます。

働き方改革とは

働き方改革とは、厚生労働省(※1)によると「働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革」とされています。
働き方改革は英語で「Work System Reform」reformは改革や刷新といった意味です。
住居などに使われる和製英語のリフォームのイメージとは異なります。

働き方改革は他に「一億総活躍社会を実現するための改革」とも言われています。
「一億総活躍」この言葉はニュースなどで耳にされた方も多いのではないでしょうか?
一億総活躍社会とは、少子高齢化が進む中で50年後も人口1億人を維持し誰もが地域、家庭、職場等で活躍できる社会を目指すことです。
一億総活躍は、英語で「Dynamic Engagement of All Citizens」と表記されます。直訳すると「全ての市民の多様で積極的な関わり」。

働き方改革とは、全国民ひとりひとりが生き生きと働き続けることを実現するために、多様で柔軟な労働環境や働き方の選択肢を整え、労働生産性を上げていくための改革であると言えます。

具体的な働き方改革の目的は主に以下の3つです。

  • 出生率を上げる
  • 働き手を増やす
  • 生産性を上げる

上記を達成するための取り組みには3つのポイントがあります。
1.長時間労働の改善
2.正社員と非正規社員の格差是正
3.女性や高齢者の就労促進

長時間労働の改善

長時間労働は女性のキャリアの中断や、男性の家事育児への協力困難などを引き起こす原因の一つです。
子育ての時期と長時間労働を強いられる時期が重なり、出生率に大きく影響しています。
この課題をクリアすることにより子育てしやすい環境を整え出生率アップが期待されます。

正社員と非正規社員の格差是正

男女共同参画局の2020年の調査(※2)によると、非正規雇用労働者の割合は女性が54.4%、男性が22.2%です。
正社員に比べ、パート・アルバイトなどの非正規社員の賃金は6割程度となっていることがほとんどです。
特に家事や育児をする女性や高齢者など正社員として働くのが難しい立場の方は非正規としての働き方を選ばざるを得ない状況があります。
この待遇差を改善し働きたい人が労働意欲を損なうことなく働ける環境を整え、生産性をあげることをめざしています。

女性や高齢者の就労促進

平均寿命が世界的にみても伸びている日本において、定年後年金のみで生活していくより健康に働けるうちは働き続けたいという労働意欲のある高齢者の方が増えてきています。
女性が出産育児で離職することなく働ける環境を保持することに加え、働く意欲のある高齢者の方々を労働市場に参加できる環境を整備することによって働き手を確保していくことが重要となっています。

以上の3つのポイントを軸に働き方改革に取り組むことで、長年続く賃金が上がらず消費が控えられ不況に陥っていた負の連鎖を断ち切り「デフレの脱却」を目指すこと。50年後も人口1億人を維持し、誰もが活躍できる社会を作り上げていこうとしているのが働き方改革なのです。

働き方改革が導入された背景

そもそも働き方改革はなぜ必要となったのか、その背景を見ていきましょう。
日本が深刻な少子高齢化の問題に直面していることはご存知の方が多いと思います。
少子高齢化がこのまま進むと現役世代と呼ばれる働き手が大幅に減少することが見込まれています。

内閣府が提供している日本の将来推計人口(※3)によると2020年に約1億2,000万人いる人口が2055年には1億人を下回るほどに減少してしまう可能性があると推定しています。
同様に15~64歳の労働人口を見てみると、2020年の約7,500万人から2055年には約5,000万人に減少すると算出されています。
つまり人口減少数は働き手の減少とほぼ同数なのです。

日本人は世界的に見ても働きすぎと言われることがよくあります。
かつては、残業し働けば働くだけ給与が上がり好景気になる時代もありましたが、今はそうではありません。
残業代は増えるかもしれませんが、根本的な基本給は上昇せず、無理な残業で体調を崩すことは逆に生産性を下げることとなり本末転倒です。
資源を持たない日本が経済力もなくなると、国力が落ちることになり外交も厳しくなります。

そこで、人口の減少により、働き手が減ることを考慮すると一人あたりの生産性を上げていくことが急務となりました。
長時間の残業を強いられることは働く障害となります。
女性が出産や育児で思うように働けていないけれど本当は働きたいと思っていたり、
60歳以上の方で65歳を超えても働き続けたいと考えていたりする方が少なくありません。

長時間労働を解消し、働く意欲のある人がその能力を発揮できる環境、多様な働き方を選択できる環境に変えていくことが労働力不足の解決には必須となりました。
減っていく働き手を確保し、経済を保持するために生産性を上げていく課題を解決するため、政府主導の法改正をすることで刷新していこうとなったのが働き方改革の背景です。

いつから始まった取り組みなのか

働き方改革については、2016年頃、安倍晋三内閣のもと提言され始め、2018年6月29日に可決成立、同年7月6日に公布されました。
その後2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されています。

働き方改革のメリット

働き方改革はコストがかかりそうだったり、従来のやり方を変えていかなければならなかったりと大変そうに見えますが、将来的に見て大きなメリットが見込まれます。
働き方改革が推進されると、どのようなメリットがあるのか企業と従業員それぞれについて見てみましょう。

企業のメリット

企業側のメリットとしては以下が挙げられます。

  • 生産性の向上
  • 人材確保
  • 企業イメージUP

★生産性の向上★

働き方改革を実施していく過程で、業務な無駄や作業の見直しが必要となります。
これまで時間のかかっていた作業をシステム化することなどにより、作業時間短縮・人件費の削減・ミスの防止など、
一人当たりの労働生産性が向上することにつながります。

★人材確保★

労働人口が減少していく昨今、人材の確保は企業にとって大きな課題です。
長時間労働の見直しや待遇差是正などにより従業員に働きやすい環境を提供することで、優秀な人材の流出を防ぐことができます。

★企業イメージUP★

労働環境が整えられ、従業員の定着率が高くなるとホワイト企業として社会的イメージがアップします。
企業イメージがアップすると採用活動で優秀な人材を確保しやすくなったり、
他企業からの信頼も高くなったりと、利益の向上といった好循環を生み出すことができます。

従業員のメリット

次に従業員側のメリットを見ていきましょう。

  • 賃金格差の解消
  • ライフスタイルに合った働き方
  • 長時間労働解消による健康維持

★賃金格差の解消★

働き方改革の代表的な施策として同一労働同一賃金が掲げられています。
この改革の目的は、正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の是正です。
これまでは同じ仕事内容なのに雇用形態によって賃金格差が大きかったため働く意欲が損なわれがちでした。
賃金格差が是正されることでモチベーションが向上し、経済的にも豊かになります。

★ライフスタイルに合った働き方★

働き方改革により長時間労働の解消や賃金格差の是正が行われることによって、
育児や介護などライフスタイルに変化がでる時期でも離職せずに調節しながら働くことが可能になりました。
例えば、フレックスタイム制やテレワークの導入が推進されることで、従業員が働く時間や場所を選択できるようになり、
これまでの出社必須、同時間就労などの概念が変わります。

★長時間労働解消による健康維持★

働き方改革により長時間労働が強いられる環境が変わり、
終業から始業の時間までの間隔を一定時間空けなければならないといった「インターバル制度」の努力義務化などが導入されました。
これにより自分の時間や睡眠時間が確保され心身共に健康が維持されやすい環境が整います。

働き方改革の具体的な8つの施策

厚生労働省の「働き方改革関連法に関する ハンドブック」(※4)に記載されている働き方改革関連法の具体的な施策は以下の8つになります。

1.時間外労働の上限規制を導入(大企業2019年4月1日施行)(中小企業2020年4月1日施行)
2.年次有給休暇の確実な取得(2019年4月1日施行)
3.中小企業の月60時間超の残業の、割増賃金率引上げ(中小企業2023年4月1日施行)
4.「フレックスタイム制」の拡充(2019年4月1日施行)
5.「高度プロフェッショナル制度」を創設(2019年4月1日施行)
6.産業医・産業保健機能の強化(2019年4月1日施行)
7.勤務間インターバル制度の導入促進(2019年4月1日施行)
8.正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間との不合理な待遇差の禁止 (大企業2020年4月1日施行)(中小企業2021年4月1日施行)

それぞれどのような施策か厚生労働省の「働き方改革関連法に関する ハンドブック」(※4)にわかりやすい概要がありますのでそのまま引用しご紹介します。

時間外労働の上限規制を導入

時間外労働の上限について月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合にも上限を設定します。

年次有給休暇の確実な取得

使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日について有給休暇を確実に取得させなければなりません。

中小企業の月60時間超の残業の、割増賃金率引上げ(2023年4月)

月60時間を超える残業に対する割増賃金率を50%に引き上げます。

「フレックスタイム制」の拡充

より働きやすくするため、制度を拡充します。労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を3か月まで延長できます。

「高度プロフェッショナル制度」を創設

職務の範囲が明確で一定の年収を有する労働者が高度の専門的知識等を必要とする業務に従事する場合に健康確保措置や本人同意、労使委員会決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外にできます。

産業医・産業保健機能の強化

産業医の活動環境を整備します。労働者の健康管理等に必要な情報を産業医へ提供すること等とします。

勤務間インターバル制度の導入促進

1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間の確保に努めなければなりません。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間との不合理な待遇差の禁止

同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、新しい法律ができたのではなく、従来からある複数の労働関連の法律に加えられた改正の総称です。
改正の根拠となる法令名は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)(※5)になります。

日本が早急に対応しなければならない少子高齢化に伴う労働人口の減少や長時間労働の慢性化、賃金格差などさまざまな課題を解決するため、
働き方改革を推進する一環として関連する法律(関連法)、労働基準法・労働時間等設定改善法・労働安全衛生法・労働派遣法・パートタイム・有期雇用労働法などに加えられる改正のことを「働き方改革関連法」による改正と言います。

働き方改革関連法の改正の施行時期はそれぞれ異なり、大企業と中小企業でも時期が異なるものがあります。

参考までに働き方改革関連法によって改正される法令を記載しておきます。(※6)

労働基準法
じん肺法
雇用対策法
労働安全衛生法
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
労働時間などの設定の改善に関する特別措置法
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
労働契約法
健康保険法
職業安定法
生活保護法
出入国管理及び難民認定法
駐留軍関係離職者等臨時措置法
障害者の雇用の促進等に関する法律
住民基本台帳法
職業能力開発促進法
農村地域への産業の導入の促進等に関する法律
雇用保険法
漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法
国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法
本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法
沖縄振興特別措置法
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
地方公務員法
厚生年金保険法
社会保険労務士法
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
建設労働者の雇用の改善等に関する法律
港湾労働法
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
地方公務員の育児休業等に関する法律
独立行政法人通則法
公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
厚生労働省設置法

数多くの法令に改正が加えられることがわかりますね。

働き方改革関連法改正のポイント

働き方改革関連法の改正についてのポイントは以下の3つになります。

時間外労働の上限規制

時間外労働の上限規制とは、残業時間の上限を原則として45時間・年360時間とすることです。
以前は、労使間の合意がある場合はその上限を超えて実質無制限になる抜け道が残されていました。

しかし今回の法改正により労使間の合意があっても、以下を遵守するよう改正されました。

  • 月45時間を超える残業は6ヶ月まで
  • 年間の残業時間は720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働含む)
  • 月間の残業時間は100時間未満(休日労働含む)

また以前は違反しても行政指導のみでしたが、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる罰則もできました。

年次有給休暇の時季指定

労働基準法が改正され、企業(使用者)は年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての従業員(労働者)に対し、
年5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならない義務が課されました。

時季指定とは使用者が労働者の意見を聴いた上で、「この日に休んでください」と時季を指定して取得させることを言います。
これまでは労働者から使用者に年次有給休暇取得を申し出るケースが多く、そのためなかなか言い出せず年次有給休暇を取得しにくい環境がありました。
使用者が労働者に休暇の取得時季を聴取し、労働者の意見を尊重するように努め、年次有給休暇の日程を指示することで休みやすい環境に変化しています。

対象者に年間5日の年次有給休暇を取得させる義務を怠った場合、
1人につき30万円までの罰則がありますので年5日の年次有給休暇を消化できるよう計画的に取得させていきましょう。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、正社員とパート・アルバイトなどの非正規雇用労働者との待遇格差を是正するための改正になります。
同一企業内において同じ職務内容で労働している場合、正社員と非正規雇用労働者で不合理な待遇格差をなくすこと。

日本の非正規雇用労働者の賃金は正社員の6割程度と言われています。
欧米諸国では8割程度です。政府は日本でも8割程度まで格差を縮められることを目標としています。

待遇差がある場合には、雇用形態によらず職務内容などを根拠として適切な待遇であることを説明する義務も強化されます。
非正規雇用労働者から待遇差について説明を求められた場合、事業主は明確な説明をしなければなりません。
説明があいまいであったりできなかったりした場合は、行政による事業主への行政ADR(裁判外紛争解決手続)がなされる場合もあります。
行政ADRが入ると企業の評判も落ちることになりますので避けたいところです。

施行スケジュールと企業に求められる対応

働き方改革の施行時期はそれぞれ異なります。同じ項目でも大企業と中小企業、業種で開始時期が異なるものもあります。

引用:厚生労働省「働き方改革関連法等について 」

補足
*フレックスタイム制はこれまでも導入されていましたが、清算期間が1ヵ月だったところ3ヶ月に延長することが企業に求められています。
1ヶ月を超える清算期間を設定するには労使間協定を結び、労働基準監督署への提出が義務づけられていますので忘れないように気を付けましょう。

*働き方改革として、高度プロフェッショナル制度適用者1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超行った者および研究開発業務従事者で月100時間超の時間外・休日労働を行った者に対し医師の面接指導が義務づけられました
そのため企業は労働安全衛生法により産業医を選任する必要があります。
医師面接義務は残業規制の対象外である研究開発や高度プロフェッショナル制度対象者にも発生しますので注意してください。

*月60時間超えの残業の割増賃金について大企業はすでに50%増しを実施していました。
中小企業が大企業と同等の割増賃金率に引き上げることが今後の目標とされています。

働き方改革推進支援助成金制度とは

働き方改革を推進していくためにはコストがかかるものがあります。
改革に努める企業、特に中小企業に対し、労働時間の改善促進を目的として政府が助成金制度を設けました。
その助成金制度を「働き方改革推進支援助成金制度」と言います。

対象者や申請方法について

働き方改革推進支援助成金制度における対象者の要件はそれぞれのコースによって違いがありますが、主に中小企業事業主が対象となります。
中小企業事業主とは主に以下の要件に当てはまる事業主を言います。

中小企業事業主定義
引用:働き方改革推進支援助成金(中小企業事業主とは)/厚生労働省より

申請方法は以下の流れです。

  1. 交付申請書を最寄りの労働局雇用環境部(室)に提出
  2. 公布決定後、提出した計画に沿って取り組みを実施
  3. 労働局に支給申請

それぞれの工程で提出期限が異なりますので確認が必要です。

働き方改革推進支援助成金4つのコース

働き方改革支援助成金制度には4つのコースがあります。

  1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
  2. 勤務間インターバル導入コース
  3. 労働時間適正管理推進コース
  4. 団体推進コース

簡単にそれぞれのコースについて概要を説明します。

(1)労働時間短縮・年休促進支援コース

生産性を向上させ労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援するコースです。

下記を満たすことが支給対象となる要件に加えられます。
(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること。
(2)交付申請時点で、「成果目標」1から4の設定に向けた条件を満たしていること。
(3)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

詳細については厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)から最新情報を確認ください。

(2)勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバルとは勤務終了後から次の勤務開始までの間に一定時間以上のインターバル(間隔・休憩時間)を設けることです。過重労働の防止、睡眠時間やプライベートの確保を図るもので制度導入は努力義務とされています。労働時間等の設定改善のためにかかるコストを支援するコースです。

下記を満たすことが支給対象となる要件に加えられます。
(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
ア 勤務間インターバルを導入していない事業場
イ 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
(3)全ての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
(4)全ての対象事業場において、原則として、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること。
(5)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

詳細については厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)から最新情報をご確認ください。

(3)労働時間適正管理推進コース

賃金台帳等の労務管理書類の保管期限が5年(当面は3年)に延長されたことによる労務や労働時間の適正管理を行う環境整備に取り組むための支援です。

下記を満たすことが支給対象となる要件に加えられます。
(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること。
(2)全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していないこと。
(3)全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則等に規定されていないこと。
(4)全ての対象事業場において、交付申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
(5)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

詳細については厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)から最新情報をご確認ください。

(4)団体推進コース

事業主団体等(中小企業事業主の団体やその連合団体)が、その傘下の事業主のうち労働者を雇用している事業主が労働者の労働条件改善のため、時間外労働の削減や賃金の引上げに向けた取り組みを実施した場合にその事業主団体等に対して助成するコースです。

下記を満たすことが支給対象となる要件に加えられます。

法律で規定する事業主団体(事業協同組合、事業協同小組合、信用協同組合、協同組合連合会、企業組合、協業組合、商工組合、商工組合連合会、都道府県中小企業団体中央会、全国中小企業団体中央会、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、一般社団法人及び一般財団法人)であること。
または、共同する全ての事業主の合意に基づく協定書を作成している共同事業主であること。
事業主団体等が労働者災害補償保険の適用事業主であり、中小企業事業主の占める割合が、構成事業主全体の2分の1を超えている必要があること。

詳細については厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)から最新情報をご確認ください。

働き方改革のアイデア3選

働き方改革を推進し達成していくためには、残業時間数の削減目標を決めたり、ノー残業デーなどの制度を実施したりするだけではうまくいきません。
初期には19時にはオフィスを退社しようなどの取り組みもありましたが、結果オフィスは19時退社するものの近くのカフェで作業する人が増え、結局失敗に終わったなどの事例もあります。
働き方改革は根本的な業務の見直しとともに働く人々の意識改革も同時になされる必要があるのです。
働き方改革を推進するためにどんな取り組みができるのかアイデアをご紹介します。

(1)会議削減の取り組み

会議などで拘束される時間は業務の中でも大きな割合を占めることがあります。
・ルーティンになっている固定会議の必要性を精査する。
・会議時間の上限を決める。
・共有ツールを活用する。
上記を実行することで、会議にかかる時間を短縮することができます。

イタリアのディーゼル(DIESEL)社が開発した「THE CAPSULE」という会議室は利用時間が最長15分間で区切られるシステムになっているようです。
効率よく時間内に会議を終わらせるための意識改革に、上限時間を決めることは効果が高いと言えるのではないでしょうか。

(2)休暇取得制度の充実

年次有給休暇は周りが取得していないのに自分だけ休むのは申し訳ないなど取りにくい環境がありました。
働き方改革により年5日の取得義務が課せられましたが、勤勉な日本人はまだまだ休むことに罪悪感を感じがちです。
ポジティブな休暇の名前を付け取得しやすい環境を整えるのも一つのアイデアとなります。
観光庁が提唱し内閣府・厚生労働省・経済産業省が後押ししている「*ポジティブ・オフ運動」(※7)などに賛同し企業として取り組むことも良いでしょう。

*ポジティブ・オフ運動:休暇を取得して外出や旅行などを楽しむことを積極的に促進し、
休暇(オフ)を前向き(ポジティブ)にとらえて楽しもうという運動

メリット
引用:ポジティブ・オフ運動のメリット具体例/観光庁より

(3)働き方の多様化

労働者人口が減少していく過程で、労働力の確保は必須事項です。
フルタイムは難しくても時間によって働ける人、働きたい人は多くいます。
働き方改革で雇用形態による賃金格差が是正され、業務内容によって同一賃金とされることで、ライフスタイルに合わせた働き方の多様化が推進されることでしょう。
サイボウズ株式会社(※8)では、1人ひとりが自分にあった働き方を選ぶことができる「選択人事制度」や自社での仕事を複業とする人を採用する「複業採用」などを取り入れています。
週3日、4日勤務など勤務日数を選択可能にしたり、複数の事業を手掛けている人を採用したりするなど、スキルを持つ人材と企業がWin-Winになる関係を構築する制度を取り入れることは労働力の確保において有効であると言えます。

さいごに

課題となっている少子高齢化による労働力不足。
これまでも何度となく問題視されてきましたが、いよいよ政府も本腰をいれて取り組み始めました。
日本の国力そのものにも影響する問題です。
働き方改革は大手企業だけで達成できるものではなく、企業の大半を占める中小企業も力を合わせて取り組まなければ解決できません。

助成金制度なども有効活用しながら、以下3つを軸に労働環境の改善に取り組むことが求められています。

  • 長時間労働の改善
  • 正社員と非正規社員の格差是正
  • 女性や高齢者の就労促進

そして働き方改革の本来の目的を達成すること。

  • 出生率を上げる
  • 働き手を増やす
  • 生産性を上げる

生き生きと働き続けられる豊かな社会を作り上げましょう。

参考資料
(※1)働き方改革のポイントをチェック!/厚生労働省
(※2)男女共同参画白書 平成30年版/男女共同参画局
(※3)高齢化の推移と将来推移/内閣府
(※4)働き方改革関連法に関するハンドブック/厚生労働省
(※5)働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律/厚生労働省
(※6)働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律新旧対照条文/厚生労働省
(※7)「ポジティブ・オフ」運動とは/観光庁
(※8)ワークスタイル/サイボウズ株式会社

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