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「ブレジャー」導入による働き方改革はメリットよりデメリットが多い?

2021.05.11

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「ブレジャー」という新しい働き方をご存知でしょうか?日本ではまだ浸透していないこともあり、どのようなメリットがあるのかイメージしにくいかもしれません。

そこでこの記事では、「ブレジャー」の導入によるメリットや導入までの課題について、企業と従業員双方の視点から解説します。新しい働き方の選択肢として、この機会にぜひ理解しておきましょう。

「ブレジャー(ブリージャー)」とは?海外では50%以上が利用!

「ブレジャー(ブリージャー)」とは「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」を組み合わせた言葉で、2009年に生まれた造語と言われています(※1)。具体的には、出張に合わせて休暇を取得し、滞在先で観光などの余暇も楽しむというもの。

アメリカやイギリス、ドイツなどの先進国においては、出張のうちブレジャーの占める割合は56~65%と、2017年時点ですでに過半数を超えています(※2)。日本における認知度は低いものの、国としてもブレジャーの導入を推奨しており、働き方改革への対応が求められる中で少しずつ浸透していくものと想定されます。

ブレジャーとワーケーションの違いは?

また、ブレジャーと混同されがちな概念に「ワーケーション」があります。「ワーケーション」とは「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」を組み合わせた造語で、リゾート地などで余暇を楽しみながら一定の日数・時間を仕事に充てることを指します。

一見、似ているようにも思える「ブレジャー」と「ワーケーション」ですが、その違いは「仕事と余暇のどちらをメインにした考え方か」とも言えるのではないでしょうか。

働き方改革の施策に!「ブレジャー」のメリットと導入企業事例

ブレジャーは「せっかく出張に行くなら、観光もしてリフレッシュしよう!」という魅力的な制度ですが、企業と従業員それぞれにとって、具体的にどのようなメリットや効果があるのでしょうか。実際にブレジャーを導入している企業の事例とともに見ていきましょう。

ブレジャー導入によるメリットとは

ブレジャーの導入による企業側のメリットのひとつは、有給休暇の取得促進ができることです。働き方改革のひとつとして、2019年4月から年次有給休暇の時季指定が義務づけられており(※3)、企業として従業員に有給休暇の取得を促すことは目下の課題です。ブレジャーの導入により、有給休暇をなかなか取得できない従業員に対し、効率よく取得を促すことができると考えられます。

また、ブレジャーの導入は既存の従業員だけでなく、新たな人材の確保にも良い影響を及ぼすでしょう。時代に合った多様な働き方の選択肢を提供できることは、間違いなく企業の魅力のひとつであり、長期的な視点で見ても優秀な人材の確保や流出抑止への効果が期待されます。

一方で、従業員にとってのメリットも多くあります。

例えば、企業側のメリットとしてご紹介した「有給休暇の取得を促進することができる」ことは、言い換えれば従業員側の「有給休暇が取得しやすくなる」というメリットでもあります。有給休暇を取得するようにと言われても、どのタイミングで休めば良いのかわからないという方には、ブレジャーの導入は効果的です。

さらに、ブレジャーを活用した従業員はリフレッシュ効果を得ることができ、仕事へのモチベーション向上にもつながります。このことは、結果として従業員だけでなく企業にとっても良いメリットになると言えるでしょう。

ブレジャーを導入している企業事例

先駆けてブレジャーを導入している日本航空株式会社(JAL)の事例をご紹介します。同社は2015年から働き方改革に取り組み、積極的な制度改革を行ってきました。しかし「休暇が取れないため、旅行を取りやめたりスケジュールを変更したりしている」「長めの休暇は取得しづらい」などという従業員の声を踏まえ、2019年5月に新たにブレジャーを導入。前述した企業側・従業員側のメリットに加え、仕事もプライベートも自身でマネジメントできる力を持つ人材育成という効果も期待されています。

ブレジャーを活用している同社の従業員は「職場を離れる時間を最小限にしながら、仕事の成果を出すことも、旅先でリフレッシュすることもできています」と述べています(※4、5)。

ブレジャー導入で労務管理が複雑化?デメリットと課題

ブレジャーを導入するにあたっては、いくつかのデメリットや課題を押さえておく必要があります。ここでは一例として3つご紹介しますので、個々の企業の現状に照らし合わせてみてください。

(1)業務と余暇の線引きが難しい

例えば、ブレジャー活用中に従業員が事故にあった場合、労災適用範囲はどこまでかということや、旅費の経費処理の仕方が問題となります。トラブルを未然に防ぐためにも、国が提示する「労災保険給付の考え方について」(※6)をベースとし、個別の案件ごとにどこまでが業務でどこからが余暇なのか、あらかじめ企業・従業員双方がその線引きを明確にしておく必要があります。

(2)従業員間の平等を保ちにくい

全員が等しく出張に行く機会がある企業であれば、それほど問題にならないかもしれませんが、どうしても一部の部署に出張が偏ることもあるかと思います。出張する機会の多い従業員のみが働き方の選択肢をより多く享受できることに対して、そうでない従業員から不平等だと感じる声が出てくるかもしれません。

そのため少々時間はかかりますが、面談などを活用し従業員の希望を把握するところから始める必要があります。なるべく個々の従業員の働き方に対する希望を理解したうえで、ブレジャー以外にも有給取得を促進できる働き方を導入するなど、平等な制度づくりを進めていくことが大切です。

(3)企業全体でブレジャーに対する理解を深める必要がある

この記事の冒頭でも述べましたが、ブレジャーは日本での認知度が低く、エクスペディア・ジャパンが行った「ブレジャーに関する意識調査」(※7)によると、回答者の約8割がブレジャーを「知らない」と回答しています。

ブレジャーに関する労務管理体制を整えるにあたっても、従業員間の平等を確保するにあたっても、まずは企業内の理解がなければ始まりません。よって、ブレジャーを導入するにあたり、制度の概要や導入のメリットなどを周知し、理解を得る必要があるでしょう。

まとめ

ブレジャーは、導入するにあたり現状いくつかの課題があることは事実ですが、企業や従業員の働き方にメリットをもたらす取り組みです。また、ブレジャーへの理解を深めること自体が、日本における働き方改革実現の一助ともなるでしょう。選択肢のひとつとして、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。

<参考資料>
※1:「Bleisure travel」(最終更新:2020年12月23日11時47分)/Wikipedia
※2:特集1 ビジネストラベルの変化と現状/公益財団法人日本交通公社
※3:働き方改革特設サイト(支援のご案内)/厚生労働省
※4:ワークスタイル変革・両立支援に関する社員の声/日本航空株式会社
※5:イベントレポート「ワーケーション・スタートアップ!」フォーラム/INTERNET Watch
※6:「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー 企業向けパンフレット(簡易版)/観光庁
※7:働き方改革の第一歩?出張+休暇=「ブレジャー」 3人に1人が「やってみたい」と回答も、実施率は世界最下位!交通費分を浮かせてお得に旅行/エクスペディア・ジャパン

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