
ワーケーションはデメリットが多い?企業が導入をためらう理由
ワーケーションという働き方をご存じでしょうか。仕事と休暇を並行して行う新しい勤務スタイルとして注目を集めているものの、実際に導入に踏み切る企業はまだ多くありません。それはなぜでしょうか。新しいスタイルだからこそ、これまでの日本企業で行われてきた働き方とは相容れない部分があり、クリアしなければならない課題も存在するからです。
そこで、今回はワーケーションのデメリットと、導入に向けて知っておきたいポイントについて解説します。
ワーケーションに関心ある会社員は62%、導入率は0.6%
ワーケーションとは、働く(work)と休暇(vacation)をミックスさせた造語のことで、リゾート地や旅先などで余暇を楽しみながら仕事にも取り組むという労働の形です。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、テレワークから一歩進んだ働き方として、日本政府も積極的に推進していく方針を示しています。
ワーケーションによる生産性や従業員の健康効果に関する実証実験はあるものの、日本旅行とウェルビーイング・ジャパン、あしたのチームの3社は今年8月、テレワークを導入している企業の経営者や従業員らを対象に、ワーケーションに対する考え方や取り組み方を調査(※1)したところ、「導入に興味がある」と回答したのは、経営者、従業員ともに半数を超え、関心の高さを示す結果になりました。その一方で、ワーケーションを導入している企業は0.6%にとどまっています。
また、将来的に自社で導入されるかの見通しについて、従業員の70%近くが「可能性は低い」と考えています。経営者側も導入をためらう理由として、「休暇中の仕事の適切な評価や、勤怠管理の難しさ」、「仕事環境の整備の難しさ」などを挙げており、ワーケーションの導入に向け、越えなければならないハードルは少なくありません。
導入は非現実的?ワーケーションのデメリット
従業員のモチベーション向上や、企業イメージのアップなどワーケーションを導入することで得られるメリットもありますが、情報が少ないこともありデメリットを危惧する企業や従業員が多いのも事実です。
ワーケーションに対して従業員が不安視しているのは、主に以下のような内容です。
・仕事と休暇の区別が難しくなる
・結果的に仕事をする時間が増えるだけではないのか
・リゾート地への移動費や滞在費など、どこまでが経費になるのか
・上司からきちんと評価されるかどうか
一方、企業側にとってワーケーションは以下のような課題があります。
・社外で勤務するために、仕事用スマホやノートパソコンなどの導入費用がかかる
・旅先で、資料やパソコンの紛失などにより情報漏洩の危険性がある
・従業員の労務管理や仕事の進捗状況を適切に把握できるか
・顧客対応などで突然、トラブルが発生した時に対応できるか
また、リモートワークと同様、企業内でも、ワーケーションに適した職種と適さない職種があります。事務職やエンジニア職などはオフィスに行かなくても仕事ができるケースが多いものの、接客などの業務は現場に行かなければなりません。ワーケーションを使えるか使えないかで、従業員間の不公平感が高まり、社内がギクシャクしてしまうのであれば、せっかく制度を導入した意味もなくなってしまうでしょう。
ワーケーションの実施企業数を増やすには
従業員、企業とも関心はあるものの、ワーケーション導入の実現に対しては不安を抱えているようです。ただ、関心の高さが示すように、環境が整備されていけば、導入する企業が増えていくことは予想されます。
これまで仕事と休暇は別々のものだと考えられてきましたが、ワーケーションはこの二つを両立させる新しい取り組みです。そのため、企業が単に在宅勤務の延長程度に捉えていては、従業員が取得に不安を覚えるのも無理はないことでしょう。重要なことは、ワーケーションを実施するための新たな評価基準やシステム環境を整え、制度を使いやすい「社内風土」を作っていくことです。
また、全国の地方自治体では、観光政策としてワーケーションの導入企業を誘致しようという動きが進んでいます。例えば和歌山県は、国内有数の海水浴場がある白浜町をはじめ、県内各地にWi-Fiを整備したワーキングプレイスを設置しています。アピールの甲斐もあり、2017年度からの3年間で計104社910人がワーケーションのために訪れたそうです。(※2)
長野県軽井沢市でも、観光協会などが立ち上げた「軽井沢リゾートテレワーク協会」が喫茶店や古民家のネット環境を整備し、自然の中でリラックスしながら働けるような態勢を整えています。こういった自治体と連携するのも一つの手です。(※3)
まとめ
ワーケーションは新しい取組みであり、これから改良、発展されていく働き方のひとつです。未知な部分が多いため、メリットよりもデメリットに目が向くのも当然ですが、少しでも関心があれば、「どうすればできるか?」という視点で考え、一歩を踏み出してみることが得策ではないでしょうか。
<参考資料>
※1:「会社員のワーケーションに対する考え方及び姿勢」に関する調査/日本旅行、ウェルビーイング・ジャパン、あしたのチーム(日本旅行、ウェルビーイング・ジャパン、あしたのチームの合同調査結果)
※2:和歌山県でのワーケーション実施の例/和歌山ワーケーションプロジェクト
※3:リゾートテレワークとは/軽井沢リゾートテレワーク協会