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<事例あり> 中小企業が女性活躍企業に変わるには?取り組み事例とメリットを解説

2021.02.18

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”頑張れば男女関係なく、評価される”ことや、”出産後も仕事をあきらめなくていい”という安心感は働く女性のモチベーション向上につながります。令和元年5月に女性活躍推進法等の一部が改正され、企業はますます女性の職場における活躍を後押しする取り組みが求められています。

その一方で、どのように女性が活躍する企業に変わればよいのか、頭を抱える担当者も多いのではないでしょうか?この記事では、女性従業員の活躍を拡大していきたいと考えている中小企業の担当者に向けて、女性従業員が活躍するための取り組みや、女性が活躍しやすい企業へと変わった実例を紹介します。

女性が活躍できる企業になると企業利益がアップする

女性が長く働ける環境があったり、女性管理職が多かったりする企業は、女性が活躍している企業と言えるでしょう。経済産業省の「女性活躍推進の経営効果」に関する資料(※1)によると、女性役員の比率が高い企業はそうでない企業と比較して、以下のような経営指標が高いという世界的な傾向が見られます。

・ROE(株主資本利益率)
・売上高利益率
・ROIC(投下資本利益率)

日本においても、1986年に施行された「男女雇用機会均等法」以来、女性の社会進出が進んでいますが、女性管理職の割合がまだまだ低かったり、補佐的な職務に従事する割合が多いのが現状です。

そんな中、日本国内で、すでに女性の活躍推進に取り組んでいる企業は、株式パフォーマンスがTOPIX平均を上回る水準で安定して上昇する傾向が見られることがわかっています。日興フィナンシャル・インテリジェンスの調査(※2)によると、女性管理職の登用度と「効率性」では0.321、「成長性」では0.236の正の相関が見られました。これは、女性管理職の登用度が高くなればなるほど、企業の「効率性」と「成長性」が高くなるということを示しています。

また、女性は出産や育児によって退職する人も多いですが、退職すると退職者分の業務をほかの従業員がおこなう必要が出てきます。それらは主に残業するケースがほとんどで、その残業代や新規採用にかかるコスト等を含めるとコストが102万円かかるとされています。一方、女性が継続して就業した場合、休業中の有期雇用者に対する給与等は83万円に抑えることができ、女性が活躍して働き続けることのできる企業の方が、コスト負担が小さいことが判明しています。

このように女性従業員が活躍しやすい職場環境や評価システム、キャリアアップのチャンスが整うことで、経営面においてプラスの効果をもたらします。

女性が活躍できる企業になるには?

「男性は仕事、女性は家庭を守るもの」という概念はもう古く、男性が働いて女性が専業主婦となって家庭を守る世帯数は、平成8年に共働き世帯数と逆転しました。そして平成27年には共働きの世帯は、男性が働いて女性が専業主婦をする世帯の2倍近い数値(※3)となっています。今や共働きが主流となり、企業の意識も変化させる必要があるのです。

では、どこから手を付けたらいいのでしょうか?まずは自分の会社の女性従業員の活躍状況を正確に把握しましょう。女性の採用比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、女性管理職の比率など、現在がどのような状況にあるのかを調査します。(常時雇用101人以上の企業は令和4年4月1日〜情報公表が義務化)

女性の活躍を推進する企業になるには、従来の制度を見直す必要があります。「重要な仕事や管理職は男性にしか任せない」という意識を変え、やる気と能力のある女性をどんどん起用して仕事を任せていくことが重要です。また、働きたいと考える女性従業員が自分に合った働き方や仕事内容を選択することができたり、仕事と家庭の両立を支援したりする制度づくりも有効です。

(例)
・保育園の迎えに間に合うように時短勤務制度を導入する
・好きな時間に働けるフルフレックス制を導入する
・在宅でも働けるようにリモートワークを取り入れる

仕事も家庭も支援できる企業であれば、女性が長く活躍でき、優秀な女性従業員の採用や、企業のイメージアップにもつながります。

女性活躍企業=女性の管理職を増やす?

男女平等にといってやみくもに女性を管理職にして数を増やすのではなく、本人のキャリアアップに対する希望をきくことが大切です。家庭や育児に忙しい女性は、あえて重要な役職になりたがらない人もいます。その場合は、補佐的な業務のまま継続できるキャリアプランや、管理職を目指すこともできる選択肢を作っておくと良いでしょう。女性が自分らしいキャリアを前向きに築けるようになると、女性が活躍しやすい企業になることができます。

女性が活躍できる企業が実践している取組事例3選

最後に、女性が働きやすい、活躍しやすい企業へと変わった企業の取組事例を紹介します。

(1)オレンジベイフーズ株式会社(女性20名、男性54名)

オレンジベイフーズ株式会社は大手ハンバーガーチェーンのパティを製造する企業です。労働条件は整っていたものの、重量物を扱う製造ラインということで工場の現場には男性が多く、女性従業員が管理職を望まない現状があり、製造ラインには女性管理職はいませんでした。

<課題>
・女性管理職がいない
・女性従業員が管理職を望まない

<取り組んだこと>
・女性活躍推進のアドバイザーによるサポート
・女性従業員交流会と研修を実施
・管理職候補の方の相談窓口を現役の女性管理職に変更
・社長自らが女性の躍進に力を入れ、全社員と1対1の面談

<社内の変化>
・女性のキャリアに関して、気軽に相談できるようになった
・女性従業員が管理職の役割を理解するようになった
・研修を受けた管理部門の女性従業員が管理職へ立候補し、仕事ぶりも認められて主任へ昇格
・製造現場からも初めて女性の管理職候が誕生

上記のような取り組みを企業全体で取り組んだことで、女性従業員も安心して働けるようになり、女性の管理職候補が出てくるなど変化が出てきました。外部支援を積極的に受けたことも推進できた要因のひとつです。

(2)イー・バレイ株式会社(女性20名、男性82名)

イー・バレイ株式会社は機械設計、電気・電子設計、ソフトウェア開発等を手掛ける企業です。もともと、女性従業員の割合が2割と少なく、特に女性技術者が少ない状況で、女性管理職もいませんでした。

<課題>
・女性管理職がいない
・女性の離職率が男性より3倍高い

<取り組んだこと>
・女性従業員の声を掲載するなど、従業員のアイディアをもとにホームページのリニューアル
・採用イベントに技術者として活躍している女性従業員に参加し直接アピール
・女性の技術者を増やすため、文系、未経験者でも活躍できるよう教育カリキュラムを構築
・管理職登用に向けて、外部教育機関と提携し全従業員が研修を受けられるようにした
・社内で目標管理制度を導入し、キャリアアップをサポート

<社内の変化>
・従業員がキャリアアップに対して積極的になり、セミナー受講者が増加
・女性従業員数の増加
・女性従業員の課長職登用

女性の離職率改善や管理職登用のための取り組みからはじまった同社ですが、女性従業員だけでなく、全従業員がキャリアアップできる体制を整えています。その結果、女性従業員の活躍に関して優良な企業だけが取得できる「えるぼし」認定も取得し、知名度やイメージ向上につながっています。

(3)株式会社システム・フォレスト(女性12名、男性18名)

株式会社システム・フォレストはクラウドサービスの提供や、IoTでコンサルティングなどを行っている企業です。常に業務が長時間労働になりがちな会社だったため、子育て中の女性従業員は短時間勤務で補助的な業務を希望し、バリバリと働いて責任のあるポジションへ挑戦しようという人はほとんどいない状況でした。

<課題>
・女性の管理職比率が低い
・子育て中の女性従業員は限定的な仕事になりがち
・優秀な女性従業員が結婚を機に退職してしまう

<取り組んだこと>
・「短時間正社員制度」を導入し、継続的にキャリアを積めるように
・目標管理を掲げて短時間でも効率的に仕事を進め、成果が上がる仕組みに変更
・自社事業のITを活用し、時間や場所に縛られない働き方を実現

<社内の変化>
・結婚や子育てしながらでも、継続して働けるようになった
・女性従業員のキャリアプランの選択肢が増えた

現場の従業員からは、「自分の状況にあわせて働けるようになり、安心」といった声があり、女性が活躍できる土壌づくりができつつあります。

まとめ

女性が活躍する企業とは、女性従業員を”優遇”するのではなく、”女性従業員のスキルが発揮できる機会を提供する”企業のことです。そのためには、これまでの当たり前を見直す必要があり、短期的に見るとデメリットも出てくるかもしれません。

しかし、世界やすでに取り組んでいる国内企業では、女性の活躍が企業全体にプラスの効果を与えることがわかっており、今後ますますそうした企業が増えてきます。仕事へのやりがいや業務内容を見直して適切なキャリアプランを用意したり、仕事と家庭を両立できるような働き方を整えて環境を作り上げたりして、女性従業員が活躍できる企業を目指しましょう。

<参考資料>
※1 女性活躍推進の経営効果について/経済産業省
※2 「28歳で課長」早めの登用は業績にプラス/日経マネー
※3 専業主婦世帯と共働き世帯の推移/厚生労働省
※4 中小企業における女性活躍推進の取組のための好事例集および改善取組事例集/厚生労働省

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