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従業員のメンタルヘルス対策…産業カウンセラーが語る「何から取り組んだらいい?」「中小企業の取り組み事例と具体例」

2023.05.12

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働き方改革のひとつとして、さまざま企業が取り組む従業員のメンタルヘルス対策。従業員の健康だけでなく企業運営にとっても重要な取り組みであり、義務のひとつです。特に春から初夏にかけては五月病を訴える従業員が増えることもあり、日ごろから企業は従業員のメンタルヘルスに注意を払う必要があります。しかし、いざ取り組もうとすると何から始めればいいのか、戸惑うのではないでしょうか。本記事では、従業員のメンタルヘルス対策の必要性や義務について、産業カウンセラーが具体的な実施方法やメンタルヘルスケアにおすすめの福利厚生例、中小企業の事例などを紹介します。

従業員のメンタルヘルス対策に取り組む理由とは?

メンタルヘルスとは

「メンタルヘルス(Mental health)」は、精神面の健康のことで、従業員の精神的な疲労やストレス軽減に対して企業が積極的に取り組み、心を健全に保つための施策を指します。

厚生労働省が2018年に発表した「職場における心の健康づくり(労働者の心の健康の保持増進のための指針)」によると、中小企業など従業員規模が小さいほどメンタルヘルス対策に取り組む企業の割合が低く、全体の6割以上の労働者が仕事で強いストレスや不安を感じています。放っておくと、従業員の仕事の能率が低下し、ミスや事故、情報漏えいやうつ病など、さまざまなリスクの火種となりかねない上、従業員個人のみならず、家族や職場の仲間に大きな影響を与える可能性が指摘されています。

仕事に起因するうつ病などの労災請求や認定件数も増加しており、労働安全衛生法の観点からも、企業には労働者の心の健康を保持、促進する義務があると考えられています。企業が従業員のメンタルヘルス対策に取り組むことで、業務中のミスや事故を防止し、離職率の低下や組織の活性化につながるのです。

参考:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

五月病と従業員のメンタルヘルス不調の関係性とは?

メンタルヘルスの不調が表に出やすい時期は、主に大型連休明けだといわれています。このことから、春先から初期にかけてのメンタルヘルス不調を「月病」と称し、新年度から月病対策に取り組む企業もあります。

新年度のはじまりである4月~5月は、新たな業務や人間関係が始まるなどストレスがたまりやすい時期です。こうした時期に大型連休を挟むことで生活リズムの乱れが起こったり、自分の悩みや疲れに向き合いすぎてしまったりすることなどがきっかけで、月病を発症する人が多いといわれています。

月病の主な症状は、睡眠障害や食欲低下、「なんとなく体がだるい」などの身体的な症状と、気分の落ち込みやイライラなどの心理的な症状です。症状が進むと、原因不明の頭痛、腹痛や深刻な自己嫌悪や自責の念、パニックといった、より深刻な症状が現れることも少なくありません。

特に、今年のゴールデンウィーク前後は、新型コロナによる行動制限が緩和され、外出や旅行をしたり、急に街中に人出が増えたことに違和感を抱いたりと生活状況や社会環境の変化に「疲れや戸惑いがある」という声も聞かれます。こうした情勢の変化と仕事、職場へのストレスが合わさることで体調不良を感じる人が例年以上に増える可能性も指摘されています。

もし「なんとなく気分が乗らない」「しっかり休めていない気がする」など、月病が疑われる症状がある人は、同僚、上司や家族など身近な人への相談はもちろん、専門家に相談するのもひとつの方法です。企業側もこうした従業員の心身の不調に関する声を聞き逃さない体制づくりに努めましょう。月病の時期だけでなく、日ごろの従業員の体調、メンタルヘルス管理に役立つはずです。

産業医は必須?中小企業のメンタルヘルス対策

中小企業がこれから会社全体としてメンタルヘルス対策に取り組んでいく場合、「職場における心の健康づくり(労働者の心の健康の保持増進のための指針)をもとに計画を立てる必要があります。この指針は「労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、同法第69条第1項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置(メンタルヘルスケア)が適切かつ有効に実施されるよう、その原則的な実施方法について定めるもの」と明記されています。

つまり、事業を運営する代表者は、自ら事業で雇用関係のある従業員へのメンタルヘルスケアを積極的に推進・表明する必要があるということです。それには、専門の委員会などを設け十分に調査・審議を行い「心の健康づくり計画」 を策定する必要もあるとしています。

そして心の健康づくり計画を進めるにあたり、重要視されているのが「4つのケア」です。特にメンタルヘルス不調が起こりやすい五月病の発生時期には、この4つのケアに注力する必要があります。「4つのケア」とはどういう内容なのか、詳しく見ていきましょう。

参考:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

《産業カウンセラーが教える》中小企業のメンタルヘルスケア対策の進め方

セルフケア

事業者は労働者に対して、次に示すセルフケアが行えるように支援することが重要です。また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者はセルフケアの対象として管理監督者も含めることが明記されています。従業員のセルフケアとして、企業が推進すべき内容は次の通りです。

  • ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
  • ストレスへの気づき
  • ストレスへの対処

ラインによるケア

「ラインによるケア」とは、部署やプロジェクトチームなど企業の中でさらに小規模のラインで括った場合に考えられる、上司と部下・同僚同士などの職場の人間関係におけるケアと考えるとよいでしょう。ラインによるケアには次のような視点をもって取り組むことが大事です。

  • 職場環境等の把握と改善
  • 労働者からの相談対応
  • 職場復帰における支援

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

事業場内産業保健スタッフ等とは産業医・保健師・看護師などの医療スタッフや、メンタルヘルス委員会の会員にあたる従業員によるケアです。こうしたスタッフはセルフケアとラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行うことが重要だと考えられています。事業場内産業保健スタッフは次に示す心の健康づくり計画の実施に当たり、中心的な役割を担います。

  • 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
  • 個人の健康情報の取扱い
  • 事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
  • 職場復帰における支援

事業場外資源によるケア

企業のメンタルヘルスケアにおける事業場外資源によるケアとは、病院や地域保健機関、EAPなどのメンタルヘルスケア専門機関のサポートによる支援のことです。従業員へのメンタルヘルスケアに取り組むうえで、事業場外資源の介入を不可欠と考える企業もありますが、自社の個性に合わせ導入の範囲を見極める企業もあります。メンタルヘルスの事業場外資源から受けられるサポートには、特設委員会や従業員への研修以外に次のようなケアがあります。

  • 情報提供や助言を受けるサービスの活用
  • ネットワークの形成
  • メンタルヘルス不調者の職場復帰における支援

メンタルヘルス対策への取組の具体的な流れ

メンタルヘルス対策へと舵を切る際、具体的にどのような流れが一般的なのでしょうか?順に見ていきましょう

  1. 担当者や窓口を設置し、メンタルヘルス対策に取り組むことを社内に周知します
  2. 法的実施の義務があるものから実施します
    ・ストレスチェック
    ・衛生委員会(50人以上の会社のみ)
    ・産業医の選任(50人以上の会社のみ)
  3. 病院や自治体による無料相談、専門の民間企業などの外部機関を利用し連携をとりましょう
  4. 従業員や管理監督者の教育、定期的な周知を行います
  5. 助成金やEAPなどを活用しましょう


EAPとは従業員支援プログラム(Employee Assistance Program)のことで「労働者の人間的な健康」を支援するものです。国からのサポートもあります。独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康づくり計画助成金」の手引によるとメンタルヘルス対策促進員による助言・支援を受け、心の健康づくり計画の作成・対策に取り組んだ場合、10万円の支援を受けることができます。

注意点は、担当者ひとりに任せないことです。社内で対策チームをつくり、一緒に考え広くアイデアを出し、社内に取り組みが広がっていくようにしましょう。また、最初にすべてをやろうとせず、法的実施の義務があるものから取り組むなど、優先順位を立てて計画的に行うことが大切です。

参考:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpojoseikin/pdf/H30/mh_josei_tebiki_H30.pdf
参考:https://www.johas.go.jp/

福利厚生に活用できる助成金とは?種類や特徴とおすすめ施策を紹介!補助金との違いも解説

チケットレストランをメンタルヘルスケア向けの福利厚生サービスとして活用

企業がメンタルヘルスに関する施策を実行するには、外部組織と手を組む必要性が生じる場合があります。産業医や地域医師会など医療分野での外部との取り組みも重要な項目ですが、従業員のメンタルヘルス維持と改善のために福利厚生サービスを導入するのも、ひとつの手段です。

メンタルヘルスと食事には因果関係があると考えられています。まだ研究段階ですが、後天的にメンタルヘルスを患う原因は、主にストレスや運動不足だといわれ、日々の食事管理によってその影響を最小限にできるという論文も散見します。うつ病の症状改善にも深く関係しているそうです。

心身の状態を整え、改善させるには栄養バランスが取れた食事が欠かせません。栄養バランスが取れた食事とは、栄養素のどれかに偏るのではなく、人間の活動に必要な栄養素をまんべんなく取れる食事です。そこでメンタルヘルスケアも兼ねた福利厚生のひとつとしておすすめなのが、エデンレッドジャパンの電子カード配布型の食事補助サービス「チケットレストラン」です。

特筆すべきなのは、チケットレストランの便利さです。導入企業での利用率99%・継続率98%・満足度90%と重宝している様子がうかがえます。チケットレストランへの加盟店は、2023年5月現在25万件をこえ、2023年3月からは Uber Eats ともサービスを連携しました。さまざまな好みや食に関する特性がある人、リモートワークや出張メインなど多様なワークスタイルの従業員が多い場合でも、平等に健康な食事を実現できます。

普段の食事にチケットレストランを利用して、コンビニやスーパーでプラス1品、健康食を取り入れるのもおすすめの利用方法です。さらにチケットレストランには、ヘルシー志向のレストランやカフェも加盟しています。

また、チケットレストランを導入することで期待できる効果として、どのような働き方をする社員でも「会社は自分の健康に配慮してくれている」と感じられることがあげられます。ワークエンゲージメントにつながり、従業員のメンタルヘルスにも良い効果があるでしょう。資料請求はこちら

メンタルヘルスケアには食事管理が重要!福利厚生で心の健康を支援する方法と理由

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従業員のメンタルヘルス対策をしている企業事例

従業員のメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業事例を、厚生労働省の心の耳から 2社紹介します。

西日本印刷工業会社

西日本印刷工業会社では「心の健康づくり計画」を策定する際に、以前から社内で取り組んでいた活動もメンタルヘルス対策と関連づけて、実施事項に盛り込んでいます。

「心の健康づくり計画」を社内にも社外にも示して広く周知し、従業員に対して長く元気に働き続けてほしいという願いをアピールしています。また、ストレスのセルフチェックを定期的に実施することによって、従業員本人にメンタル面での気付きを認識してもらい、出勤時などに経営者が自ら従業員の顔を直接見ながら声をかけることによって、日頃の従業員の様子や変化を知ったり、社内コミュニケーションを活性化させたりしています。

参考:こころの耳「西日本印刷工業会社」の事例
参考:http://www.nishiin.com/

希望の里ホンダ株式会社

希望の里ホンダ株式会社は、多様性のある人材が共に働ける環境が整った企業で、健康診断だけでなく、産業医と保健師、管理栄養士が1つのチームになって、メンタルヘルス対策や健康管理のサポートをしています。

そのひとつとして、ストレスチェックを実施して高ストレスだった従業員に対して、医師による面接指導のほかに、高ストレス者全員との面談をする機会を設け、改善に取り組んでいます。また、障がいを持つ従業員に対する取組にも力を入れており、面談を通じて障がい者が感じやすいストレスを確認し、施設の整備を行ったり、全従業員が手話を学ぶ機会を作ったりするなどの施策を実行しています。

さらに、参加型職場改善活動を実施する際に、障がいを持つ従業員からも活発な意見が出るように外部の支援を受けたり説明を多く行ったりと、働く人の立場に沿った工夫を行うなど、全従業員が働きやすい環境づくりもメンタルヘルス対策の一環として取り組んでいます。

参考:こころの耳「希望の里ホンダ株式会社の事例」
参考:http://www.kibou-honda.co.jp/

メンタルヘルスケアは法的義務のあるものから外部連携へ

メンタルヘルス対策を始める際、一度にすべての対策を実行に移すのは難しいでしょう。急に対策を打ち出してもストレスが表面化して、問題が大きくなりかねないというリスクがあります。そのため、まずは周知を行い、法的義務のあるものから実施するのがよいでしょう。そのうえでチケットレストランのように、従業員の身心に直接働きかけられる福利厚生サービスを利用するのも効果的です。

産業カウンセラーや民間の福利厚生サービス、外部機関を活用し、従業員や管理監督者への教育を行い、助成金やEAPの活用を検討し、五月病を訴える声が増える時期だけでなく、日ごろから従業員のメンタルヘルスケアに注意しましょう。

※産業カウンセラーとは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格を有する人を指し、メンタルヘルスや職場の人間関係、キャリア形成等のカウンセリングを主な仕事としています。

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