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《産業カウンセラーが教える》中小企業のメンタルヘルスケア対策の進め方


企業において、メンタルヘルス対策に取り組むこと、とりわけメンタル不全の従業員が出る前に防ぐことはとても重要なことです。しかし、知識や専門家もいない中、何から始めればいいのか、具体的にどう取り組めばいいのか戸惑ってしまうのではないでしょうか。

この記事では、産業カウンセラーの筆者がこれからメンタルヘルスケアに取り組む中小企業へ、メンタルヘルス対策の進め方や一次予防で大切なポイントを解説します。

産業カウンセラーとは・・・
職場における人間関係や環境改善、メンタルヘルス対策、キャリア形成等の支援をおこない、働く人が働きやすいようサポートする役割を担っている

メンタルヘルスケアに取り組む企業メリット

職場におけるメンタルヘルスケアとは、従業員がストレスのない状態で健康に業務を行うことができるように企業側が対策や支援を行うことです。

企業がメンタルヘルスケアに取り組まない場合、どんなことが起こるでしょうか。精神疾患を抱える従業員を放っておくと、以下のようなことが起こり、職場の雰囲気が悪くなったり、企業に損害をもたらす可能性もあります。

・生産性や創造性の低下
・仕事のモチベーション低下
・欠勤、遅刻の増加
・仕事のミスやトラブル多発

中小企業のメンタルヘルスケア実施率が低い理由

従業員の健康管理は企業メリットだけでなくリスク回避の側面も併せ持っています。しかし、事業所規模が小さくなればなるほど、メンタルヘルスケアへの取り組み率は低い傾向にあります。

事業所規模別(※1)に見ると、従業員数が100人以下だとメンタルヘルスケアに取り組んでいる割合がぐっと下がり、10〜29人規模だとおよそ半数の実施率になっています。人員不足の為にメンタルヘルス対策に人が割けない、小さな企業には関係がないと思っているなどの理由で対策への取り組みが遅れていると言えるでしょう。

また、従業員が50人以上の企業は労働安全衛生法に基づき、産業医の選任やストレスチェックの実施が義務となっており、違反すると50万円の罰金が科されるため、従業員が50人以上の企業は積極的にメンタルヘルス対策に取り組んでいる結果と言えます。

では、これからメンタルヘルスケア対策を進める場合、どのような流れになるのでしょうか?

中小企業のメンタルヘルス対策の進め方

これからメンタルヘルス対策に取り組む場合、まず企業がメンタルヘルス対策に取り組むことを社内に向けて表明します。体制づくりには、窓口担当や取り組みの舵取り役となる「事業場内メンタルヘルス推進担当者」の選定からはじめます。

指針では、企業内の衛生管理者や常勤の保健師、看護師から選任することが望ましいとされています。しかし、50人未満の規模の企業では保健師などがいる企業は少ないので、多くの場合、産業医の助言や指導を受けながら、人事部や総務部が先頭に立って対策を行っています。

従業員が50人未満の企業だと、無料の相談窓口からストレスチェックの調査票(ダウンロード無料)を利用することで、取り組み費用を0円に抑えることができます。しかし、50人以上の従業員が在籍する企業では、産業医の選任が必要となり、産業医費用がかかります。産業医との契約や、ストレスチェックの実施を専門企業にお願いしたりする場合は、年間30万円~80万円くらい(※2)の予算を確保しておきましょう。

準備が整ったらまずは事業者がメンタルヘルス対策に取り組むことを社内に向けて表明します。

次に「心の健康づくり計画」を策定します。労働局などが雛形(※3)を公開していますので、参考にしながら自分の会社に沿うように作っていくといいでしょう。メンタルヘルス推進センターなどで相談ができますので、無理に専門家を雇う必要はありません。

メンタルヘルスケアの1次予防、2次予防、3次予防とは

画像参考:新ストレスチェック制度の趣旨・目的について/厚生労働省(※4)

企業でメンタルヘルスケア対策に取り組むには段階があります。

(1)メンタルヘルスケア 1次予防
1次予防とは、「ストレスチェック」などの実施により、ストレス不全の状態に陥ることを未然に防ぐ予防対策を指します。従業員本人が現在の自分のストレス状態をチェックし、把握。ストレスが溜まっている場合は休養をとったり、産業医によるカウンセリングを実施し、悪化を防ぎます。

また企業が積極的に職場改善を行うことによって、従業員がメンタルヘルス不全に陥る要因を取り除くことも必要です。

>>職場改善の参考に「離職率を下げる取り組みに成功した5事例!働きやすい環境作りのポイント」もあわせてご覧ください。

(2)メンタルヘルスケア 2次予防
2次予防はストレス不全に陥った人の早期発見、対処です。メンタルヘルス不全に陥った人には、これ以上症状を悪化させないようにできるだけ早めに対処や支援を行うことが重要です。

ミスや勤怠不良が増えてきた、などのサインを見逃さずに早期発見に努めましょう。そして産業医と連携して適切なアドバイスに基づいてケアをしたり、業務調整や配置転換などを行って早期回復を目指します。

(3)メンタルヘルスケア 3次予防
最後に3次予防です。3次予防はメンタル不全に陥って休職していた人の、職場復帰を助ける取り組みのことです。メンタルヘルス不全に陥って休職した場合、職場に復帰することは、本人にとって負担にもなります。就業時間や業務などを調整して様子をみながら進めていきましょう。

予防が大事!メンタルヘルスケアの1次予防の取り組み方

企業と従業員お互いにとって重要なのは、メンタルヘルスの一次予防です。メンタルヘルス不全に陥ることで、従業員本人は辛い思いをするだけでなく、休職すると金銭的にも不安を抱えて生活することになります。また、企業にとっても、従業員が長期的に職場を離れてしまうので、従業員を穴埋めするための採用や教育費用がかかったり、他の従業員にしわ寄せが行ってしまいます。

では、1次予防を進めるにあたり具体的にどんなことに取り組んでいけばよいでしょうか。従業員がメンタル不全に陥る要因はさまざまなものがあり、職場の要因として考えられるものは仕事の量や質、人間関係、職場環境などが挙げられます。

《職場環境改善の確認ポイント例》
・仕事量や残業量は適切か
・仕事をする環境は適切か
・人間関係は円滑か

職場で改善が行えるものは積極的に改善して、ストレスの要因をできるだけ減らしていきましょう。また、ストレスチェックを定期的に実施し、管理監督者は部下が「働きづらさ」を感じていないか、サインを見落とさないよう注意深く見守ることも重要です。メンタルヘルス担当者はそのチェック結果を踏まえて本人に声がけをしたり、産業医に適切な指導を求めたり、職場改善を働きかけていきましょう。

また、「うつ病になるのは自分の心が弱いからだ」「恥ずかしいことだ」と自分自身で抱え込む人も少なくありません。メンタルヘルス不全は誰にでも起こりうることだということを、社内に徹底していき、メンタルヘルス不全を受け入れる風土づくりを行うことが必要です。

そのために、担当者は企業全体でメンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいることを社内にアピールし、匿名で会社に意見できる「ご意見箱」を設置したり、気軽に相談できる窓口があることを周知することも大切です。ほかにも、外部の専門家を招き、メンタルヘルス対策についての講習会を開くことも有効です。ポイントは、従業員が不調を相談しやすい環境をつくることです。

まとめ

メンタルヘルス対策に取り組むにあたり、重要なのは企業のトップや人事労務の担当者がメンタルヘルス対策に取り組む重要性を認識することです。取組内容や計画作成においては、国のサポートを受けることもできるので、積極的に活用していきましょう。

<参考資料>
※1:職場における心の健康づくり/厚生労働省
※2:予算別メンタルヘルス対策モデル/産業医振興財団委託研究
※3:事業場における心の健康づくり計画(例)/茨城労働局
※4:新ストレスチェック制度の趣旨・目的について/厚生労働省
「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト