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【社労士監修】特別休暇とは?種類や給料の有無、法定有給休暇との違いを解説

2022.09.13

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監修者:森田修(社労士事務所 森田・ミカタパートナーズ)

特別休暇とは、従業員の心と体を休める有効な休暇制度。さまざまなシーンで活用できることから、従業員のモチベーションなどを考慮し、導入を検討する企業が増加中。企業のイメージアップにも有効な制度でもあります。

種類も豊富に存在する特別休暇とはどのような休暇なのか、有給休暇との違いや特別休暇の種類、導入の流れやメリット・デメリットについて理解を深めておきましょう。

特別休暇とは?

特別休暇とは、企業が従業員に対して与える休暇のひとつ。福利厚生として利用されることもあり、法律の定めはなく、企業が自由に付与できます。

特別休暇は企業によってさまざまな種類があり、「病気休暇」や「夏季休暇」、「リフレッシュ休暇」などがよく導入されています。「失恋休暇」や「誕生日休暇」などユニークな名目の休暇を設ける企業もあります。

6つの特別休暇

特別休暇は法律で規定されていないため、内容についても企業が自由に決めることが可能です。そのため特別休暇にはさまざまな名目が存在し、おもに以下のようなものが挙げられます。

慶弔休暇

慶弔休暇とは、冠婚葬祭時に付与される休暇です。従業員とその家族が結婚、または他界したときなどに与えられます。付与される日数は、出来事の当事者によって異なるのが一般的です。例えば結婚したのが従業員本人であれば5日、従業員の兄弟であれば1日などのように、対象に合わせて休暇の日数が変動します。

慶弔の捉え方は企業によって異なりますが、一般には結婚や出産などを慶事、告別式や通夜などは弔事として扱われています。

結婚休暇

結婚休暇とは、従業員の結婚に関連する事柄に対して付与される休暇です。慶弔休暇の慶事とは異なり、結婚後における新生活の準備や新婚旅行など、結婚式・披露宴以外にも利用されます。

付与日数は企業によって異なりますが、新生活の準備や新婚旅行には相応の期間が必要なことから、5~7日ほど付与するケースが多いようです。

ボランティア休暇

従業員が社会貢献活動を行うときに付与される休暇です。たとえば地震、大雨や台風による災害ボランティアがこの対象。社会的責任として復興支援を行う企業も増えており、資金援助をはじめ、ボランティア活動を実施するケースも少なくありません。

またオリンピックなど、世界的な競技大会が行われる際のボランティア活動も対象となる企業もあります。企業によっては、ボランティア活動に要した交通費なども、支給するケースがあります。

夏季休暇

夏季休暇とは、夏季に一定期間の休日が付与される休暇です。お盆や帰省、家族旅行などを目的に利用されています。連休が必要となるケースも多いことから、夏季休暇もまとまった日数を付与するのが一般的です。

なお夏季休暇の設定時季については、それぞれ異なります。企業によっては繁忙期を除くシーズンなど、業務状況を考慮した時季に設定されることもあるようです。

リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇とは、従業員の心身を休ませることが目的の休暇です。昨今は長時間労働などの問題を背景に、従業員における心身のケアも企業側に対応が求められています。そのため一定のタイミングごとに、心身の休憩やリラックスを目的として取得できるのがこの休暇です。企業側からリフレッシュ休暇を与えることで、従業員も周りの目を気にせずに休日を利用できます。

リフレッシュ休暇の規程については、企業毎によって大きく異なります。勤続年数を取得条件とする企業もあれば、全ての従業員に毎年休暇を付与する企業もあります。

病気休暇

病気休暇とは、通院や治療を行う際に付与される休暇です。従業員が病気やけがなどで療養が必要となった際に取得できます。近年では身体的な病気だけでなく、精神疾患を患ったときにも付与されるのが一般的です。仕事が原因でうつ病を発症した、などが該当します。

付与される日数は、企業によってさまざま。治療内容や通院状況に応じて、時間単位で付与される場合もあります。

特別休暇を導入するメリット

特別休暇は、企業が自由に規程を設けることができる制度です。しかし自社の都合のみを考慮したものでは、効果も半減。効果的な規程を定めるには、はじめに導入するメリットを理解しておくことが必要です。

特別休暇のメリットは以下の3つが挙げられます。

【従業員のモチベーション維持】
休暇は従業員のモチベーションを左右する重要なものです。休暇を充実させることで従業員は心身の疲れを癒すことができ、仕事に対する意欲も継続されます。モチベーションを保つことができれば、集中して仕事に取り組むことができ、生産性アップにもつながります。

【企業のイメージアップ】
特別休暇を充実させることは、企業の好印象に。近年では「ブラック企業」と呼ばれる言葉が存在するほど、労働者は休暇に対して敏感です。特別休暇が充実していれば、良好な職場環境を整えていることも伝わります。企業のイメージがアップすると、優秀な人材の確保にも期待が持てます。

【離職率の改善】
休みが取れないと、疲れやストレスが溜まってしまいます。限界を迎えた従業員のなかには、退職を考える方も。退職者が多くなると、企業のイメージも悪いものに。このようなときにも、特別休暇の導入が有効です。休暇により、従業員は体を休めると共にストレス解消を行えます。離職を防ぐことにもつながるでしょう。

特別休暇を導入するデメリット

特別休暇を導入することにはデメリットも存在します。効果的な特別休暇を導入するには、デメリットを把握したうえで、適切な対策を講じることも大切。特別休暇には、以下のようなデメリットが挙げられます。

【業務の人手不足】
まず人手不足になるという点です。業務にあたる人数が減り、残りの従業員が負担する業務が増えてしまいます。業務量が多い場合には、従業員ひとりあたりの負担がさらに増すでしょう。結果としては残りの従業員が体調を崩す、モチベーションが下がるなどの事態になりかねません。

特別休暇は、出勤する従業員のことも考慮することが大切です。繁忙期を避けるなどの対策を講じるようにしましょう。

【従業員から不平不満が出る場合もある】
時代が変わると共に働き方も多様化しており、生活スタイルや取り巻く環境は、従業員ごとに異なります。そのため全ての従業員に平等なものを設けるのは、困難な問題。従業員によっては、不平不満が出てしまうでしょう。一定の不平不満は致し方ありませんが、企業側も減らす努力は必要です。

従業員の意見を聞き入れつつ、できる限り平等な規程を作成しましょう。定期的なヒアリングやアンケートの実施も有効です。

【取得率が悪いと導入した効果が得られない】
従業員のなかには、「休暇を取りにくい」と思っている場合も。実際に特別休暇を導入しているものの、あまり利用されないといったケースが見受けられます。せっかく導入しても利用されなければ、効果は得られません。

取得率を上げるには、休暇を取得しやすい職場環境づくりを行いましょう。役職者が積極的に取得すれば、他の従業員も休暇を取りやすくなります。

特別休暇と有給休暇の違い

特別休暇と似ているものに「有給休暇」があります。有給休暇とは、賃金が発生する休暇のことです。付与すべき最低日数などは法律により規定されており、企業に対して取得義務が課せられています。そのため企業は、年に10日以上の日数が付与された従業員に対して、期間内に5日以上の休暇を消化させなければなりません。違反した企業には、30万円以下の罰金が科せられます。(※1)

一方の特別休暇は、法律による規定などはありません。付与する日数や条件、賃金の支払いなども企業が自由に取り決められます。法律の定めがないため、そもそも導入していない企業も少なくありません。なお有給休暇は、「法定休暇」に該当する休暇です。

法定休暇とは

法定休暇とは、法律によって定められている休暇のことです。条件に該当する場合、規程に沿って必ず休暇を与えなければなりません。またなかでも有給休暇は、付与要件や付与日数なども法律で決められています。

5日間の有給休暇を与えない、労働者の請求する時期に所定の有給日数を与えなかった場合、前者の場合は30万円以下の罰金、後者の場合は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

法定休暇にはほかに、「産前産後休暇」や「育児休暇」「介護休暇」などが挙げられます。なお取得時季も、法律で定められている場合があります。ただし有給休暇の場合、正当な理由があれば取得時季を変更することも可能です。これを「時季変更権」といいます。

特別休暇は法定外休暇

法定外休暇とは、法律で定められていない休暇のことです。名目や支給条件などは企業が自由に決めることができ、特別休暇も法定外休暇に含まれます。法律の規定がないため、前述した「誕生日休暇」など豊富な種類が存在します。イメージ戦略として活用する企業も少なくありません。

よく導入される法定外休暇としては、「特別休暇」をはじめ「裁判員休暇」などが挙げられます。また最近では「不妊治療休暇」を導入する企業もあるようです。

特別休暇は企業の判断による

特別休暇は法律の規定がないため、企業の判断によって導入されています。しかし項目によっては、判断が難しい場合も。基本的には企業が自由に設定できますが、誤った認識にもとづき定めると、法律に触れる可能性もあります。企業で判断が難しい項目としては、以下のものが挙げられます。

有給か無給か

まずは給料について。有給休暇は法律の規定により、賃金を支払わなければなりせん。対して特別休暇は法律の定めがなく、賃金に関する規定も存在しないため、無給とすることも可能です。ただし定めた条件を変更する際は、法律に違反しないよう注意が必要です。

労働契約法では、「労働条件の不利益変更」が禁止されています。(※2)これは労働条件について企業が一方的に、労働者の不利益となるような変更をしてはならないというものです。例えば特別休暇を有給として定め、就業規則にも記載していたとします。このとき従業員への説明もなく無給に変更してしまうと、不利益変更にあたり違法となる可能性があります。

なお新型コロナウイルスの流行に伴い、注目を集めたものが「ワクチン休暇」です。新型コロナウイルス用のワクチンは副反応が確認されており、従業員が摂取した際、業務に支障をきたす、といったケースも見受けられました。そのためワクチン休暇を定め、導入を検討した企業もあったようです。

出勤扱いについて

続いて「特別休暇を出勤扱いとするかどうか」という点です。出勤は「出勤率」として計算され、有給休暇の付与条件にも影響を与えます。有休の取得日数にも関係するため、従業員にとっては重要なものです。

特別休暇の場合、出勤扱いにするかどうかについても企業に決定権があります。そのため「有給とするが、出勤扱いにはしない」などの規定を設けることも可能ですが、従業員に不利にならないように考える必要があります。
他社の動向や従業員の意見を参考にしつつ、できる限り不利にならないように調整を図りましょう。

公務員の特別休暇

公務員にも特別休暇が付与されています。公務員の特別休暇は、法律によって定められており、国家公務員と地方公務員で条件が異なる場合があります。国家公務員は「一般職の国家公務員の休暇制度」で取り決めがあるのに対し、地方公務員は所属する自治体が定める条件に従わなければなりません。

なお公務員でも、「夏季休暇」や「忌引き休暇」などの利用が可能です。ちなみに国家公務員の場合、人事院が公表している資料では病気休暇は原則90日、ほかの特別休暇については、それぞれ必要な日数を取得できるとしています。(※3)

特別休暇の導入と注意点

特別休暇は自社に適したものを導入することが大切です。ただし導入の際は、注意すべきポイントがあります。より効果的な運用を行うには、注意点を理解し適切な手法で導入を進めましょう。

導入する目的を明確にする

特別休暇は期待する目的によって内容が異なります。例えば長時間労働が課題の企業では、定期的なリフレッシュ休暇などの導入が効果的です。一方、従業員のモチベーションアップを目的とするのであれば、他社にはない魅力的な休暇の導入がおすすめ。このように自社の目的によって、導入すべき休暇が変わってきます。目的を明確にするためにも、まずは自社を振り返り、課題や問題点の洗い出しを行いましょう。

なお課題の洗い出しを行う際は、人事担当者からの目線だけでなく、従業員の立場になって考えることも重要なポイントとなります。

ルールを就業規則に記載して従業員へ周知する

特別休暇の目的を明確にし、休暇内容を決定後、就業規則に記載を行います。定めておきたい内容としては、以下の項目です。

・特別休暇の目的と概要
・取得条件
・取得日数
・申請方法
・有給なのか、無給なのか
・取得期限            など

就業規則に定めるときのポイントは、目的に沿ったルールであることです。目的に応じたルールを明確に記載することで、従業員もイメージがしやすくなります。

就業規則の記載後、労働者の過半数の代表者の意見を聴取し意見書を取り、届け出を行い従業員へ周知していきましょう。周知方法には以下のようなものがあります。

1、常時各事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付ける
2、書面を従業員に交付する
3、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する。(※4)

変更した就業規則の届け出を行う

特別休暇を就業規則へ追記したときは、労働基準監督署へ届け出を行う必要があります。特に10名以上の従業員が在籍する事業場では、届け出を行わないと罰則の対象になります。(※5)加えて届け出は事業場または支店ごとに、管轄の労働基準監督署へ届け出を行わなければなりません。なお届け出は、持参でも郵送でも可能です。届け出まで完了すると、実際に運用がスタートとなります。

特別休暇は形だけにならないよう注意

特別休暇はいかに運用するかがポイント。せっかく充実した特別休暇を導入しても、周知ができておらず、利用されなければ効果がありません。取得履歴などは、正確に管理するようにしましょう。取得が進まないようであれば、改めて周知を行う必要があります。

どうしても取得が進まないようであれば、規定の見直しも必要です。取得が進まないのであれば、もしかすると利用しにくい制度になっているのかもしれません。利用されないと導入した効果が得られないため、状況によっては改善を行う必要があります。このようなときは、従業員にヒアリングを行ってみましょう。改善すべき点を発見できる可能性があります。

さいごに

特別休暇は企業が独自で取り入れられる、活用がしやすい休暇です。効果的な休暇を導入できれば、従業員のリフレッシュを促し、生産性を向上させ、さらには企業のイメージアップも期待できます。

取得を促すためには休暇を取得しやすい職場環境と、取得しやすい規程を設けることが大切です。魅力的な特別休暇を導入し、従業員のモチベーションアップを図りましょう。

【参考資料】

(※1)「厚生労働省/年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説 Point7 罰則

(※2)「厚生労働省/労働契約法のポイント

(※3)「人事院/一般職の国家公務員の休暇制度(概要)

(※4)(※5)「厚生労働省/就業規則を作成しましょう 3 就業規則の作成・変更、届出の流れ

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