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【ISO30414】中小企業の取り組み施策とは?11領域58項目の指標一覧

2023.04.04

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ISO30414とは人的資本に関する開示情報の国際的なガイドラインです。ISO30414認証を取得した企業は、日本ではまだ少ないものの世界を見渡すと、欧米を中心に中小企業を含め多くの企業に広がりを見せています。日本でも有価証券報告書への人的資本情報開示義務化を受け、企業規模に関わらず、今後日本でもISO30414の指標に取り組む企業が増えるでしょう。今回はISO30414と人的資本について、ISO30414の11領域58項目について、中小企業がISO30414の指標達成や認証に取り組む際の効果的な施策例を紹介します。

ISO30414 とは

2018年12月に人的資本情報開示の国際的ガイドライン「ISO30414」が発表されました。ISO30414は「アイエスオー30414」と読みます。企業の人的資本情報をどのように報告するか、という国際的な指針です。

ISO30414が定められた目的の一つが、各国で基準が異なる人事や労務に関する法規制を飛び越え、全ての企業が人的資本に対して透明性を高めることとされています。欧米では、早くから人的資本情報開示が義務化されていることもあり、制定後まもなく、多くの企業がISO30414認証を取得しています。

日本でも2022年に初のISO30414認証の取得に成功した企業が出始め、今後は大企業のみならず、中小企業にもISO30414取得に踏み出す企業が増えると見られています。

ISOとは

ISOは、スイス・ジュネーブに本部がある非政府機関国際標準機構(International Organization for Standardization)の略称です。一般社団法人「日本品質保証機構」のホームページによると「ISOの主な活動は国際的に通用する規格を制定することであり、ISOが制定した規格をISO規格といいます」と記載されています。

ISO規格とは「国際的な取引をスムーズにするために、何らかの製品やサービスに関して『世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できるようにしましょう』という国際的な基準」です。ISO規格はさまざまな製品にも定められていますが、組織の品質活動や環境活動についてもISOが策定した「マネジメントシステム規格」が制定されています。

人的資本とは

人的資本とは、個人一人ひとりが持つ技術や知識、能力、持って生まれた資質などを価値を生み出す資本と捉えたものです。人的資本を企業の経営戦略に当てはめるのが人的資本経営です。

経済産業省のホームページによると「人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です」と明記されています。

企業に所属する従業員に関わる経費を単なるコストとしてではなく、企業成長や生産率を向上させる投資対象と捉え、投資を行うことで企業価値を高める経営戦略という位置づけです。国際的にも、ESGやSDGs・健康経営などの側面から、人的資本経営が重要だという考えが広がりを見せています。

投資家なども、以前は投資対象の企業に対し、利益率や経営成績などを重視する傾向がありましたが、近年はそれに加えて「どれだけ従業員を大切にしているか」も投資先を選定するにあたり重要なチェック項目だと捉えています。事業の継続や成長のためには優れた人材を確保し、能力を高める働きかけが欠かせないからです。

その判断基準として、2023年3月より、金融庁では有価証券報告書に人的資本情報を可視化するための情報開示を義務づけました。「従業員への投資を行っているか」「従業員に対して行った投資により利益は上がっているか」などが基本的なチェック項目です。今まで人的資本経営に向き合っていなかった企業なども、投資家や株主の評価を勝ち取るため、人的資本経営に向き合わざるを得ない時代が到来しました。

ISO30414認証のための開示11領域の58項目一覧

ISO30414認証では、開示すべき人的資本情報の指標の11領域を定めています。

それぞれの領域に指標が設けられ、その数は58項目にのぼります。現段階では「その全てを網羅し、開示しなければならない」わけではありません。しかし、58指標に取り組むことで、企業運営がISO30414基準に近づけられ、人的資本経営を叶えられるメリットがあります。11領域58項目、それぞれの指標を解説します。

①コンプライアンスと倫理

企業が、コンプライアンスと倫理にどれだけ向き合っているのかを示す領域です。具体的な開示項目は次の通りです。

  • 提起された苦情の種類と件数
  • 懲戒処分の種類と件数
  • 倫理・コンプライアンス研修を受けた従業員の割合
  • 第三者に解決を委ねられた紛争 外部監査で指摘された事項の数と種類

②コスト

企業が人材に「どれだけのコストをかけているか」を示す領域です。人的資本の観点から、要となる領域であり、開示項目は次のように細かく分類されています。

  • 総労働力コスト
  • 外部労働力コスト
  • 総給与に対する特定職の報酬割合
  • 総雇用コスト 一人当たり採用コスト
  • 採用コスト
  • 離職に伴うコスト

③ダイバーシティ

年齢、性別、障がいなど、個々の人材の多様性の尊重に対し企業がどれだけ注力しているかを示す領域です。一般の従業員だけでなく経営陣に多様性ある人材が含まれているかも指標となっています。

  • 年齢
  • 性別
  • 障害
  • その他
  • 経営陣のダイバーシティ

④リーダーシップ

経営陣や管理職など、企業内で指揮を取るポジションにある人材への信頼や責任に関する領域です。具体的な開示項目は次の通りです。

  • リーダーシップに対する信頼
  • 管理職一人あたりの部下数
  • リーダーシップ開発

⑤組織風土

組織風土は、企業文化に関する領域だと誤解されがちですが、従業員のエンゲージメント、定着率など、従業員満足度に着目した領域です。開示情報には、社内アンケートなどを実施し具体的な数値を明記する必要があります。

  • エンゲージメント
  • 満足度
  • コミットメント

⑥健康・安全・福祉

人的資本として最もベースとなる国際的な指標が、従業員の健康・安全・福祉に関連する領域です。ISO30414の開示項目としては、労働災害に着目した項目がメインです。

  • 労災により失われた時間
  • 労災の件数(発生率)
  • 労災による死亡者数(死亡率)
  • 健康・安全研修の受講割合

⑦生産性

企業の生産性に関する領域もISO30414では開示の必要があります。投資した人的資本に対する回収率を明確にするのが、生産性を開示する理由とみられています。主に従業員1人あたりが生み出す利益や売上高などが開示項目です。

  • 従業員1人当たりEBIT /売上/利益
  • 人的資本ROI

⑧採用・異動・離職

企業内で「採用・異動・離職などにどのような動きがあったか」「キャリアパスは用意されているか」などを開示する領域です。企業内の人事活動や人の動きの正当性を表す分野なので項目数が最も多い領域です。全14項目あり、投資家などから見て人的資本経営が正しく行われているかの判断材料となる領域です。

  • 募集ポスト当たりの書類選考通過者
  • 採用社員の質
  • 採用にかかる平均日数
  • 重要ポストが埋まる迄の時間
  • 将来必要となる人材の能力 内部登用率
  • 重要ポストの内部登用率
  • 重要ポストの割合
  • 全空席中の重要ポストの空席率
  • 内部異動数
  • 幹部候補の準備度
  • 離職率
  • 自発的離職率
  • 痛手となる自発的離職率
  • 離職の理由

⑨スキルと能力

企業が「従業員のスキル、能力を高める取り組みを行っているか」など人材開発への注力度合に関する領域です。全項目を数値化する必要があり、数値が高い企業ほど人材育成に注力していることが示せます。

  • 人材開発・研修の総費用
  • 研修の参加率
  • 従業員1人あたりの研修受講時間
  • カテゴリ別の研修受講率
  • 従業員のコンピテンシーレート

⑩後継者の育成

企業や事業のトップなど「重要なポジションの後継者をいかに育成するか」計画を問われる領域です。これまでの継承率や候補者の育成、準備の度合いについてなどが具体的な開示項目です。

  • 内部継承率
  • 後継者候補準備率
  • 後継者の継承準備度(即時)
  • 後継者の継承準備度(1-3年,4-5年)

⑪労働力

企業が確保している労働力についての指標領域です。働き方などに伴い、従業員の数を数値として明記する必要があります。具体的な開示項目は次の通りです。

  • 総従業員数
  • 総従業員数(フル/パートタイム)
  • フルタイム当量(FTE)
  • 臨時の労働力(独立事業主)
  • 臨時の労働力(派遣労働者) 欠勤

ISO30414指標を基準とする人的資本施策例

現在、人的資本情報開示に取り組んでいない中小企業は少なくありません。しかし、有価証券報告書への人的資本情報記載義務化を境に、ISO30414の指標を見本に人的資本経営に取り組む企業が急増しています。改めて、新しい取り組みや施策の導入が必要な企業もあるでしょう。

人的資本経営に向けた具体的な取り組みの中でも、実行しやすく従業員のエンゲージメント強化につながりやすくISO30414の指標達成にもつながる施策を解説します。

多様性の尊重を徹底

ISO30414認証のための人的資本情報開示11領域の中でも、企業のダイバーシティへの姿勢が大きな指標となっています。企業は、従業員の性質や属性・性別・特性など個性を尊重できる環境を整える必要性に迫られているといえます。

企業は今や、求職者に選ばれる存在であり、大企業・中小企業を問わず「自分らしさ」を叶えられない企業には優秀な人材が集まらない傾向です。また、働き方改革の中でも触れられている「同一労働・同一賃金」を確立しない限り、離職やエンゲージメントの揺らぎが起こりやすい側面もあります。

ダイバーシティを受け入れる体制を整えていない企業には人材不足やパワハラの横行など、事業を揺るがしかねない事態に追い込まれる未来が待ち受ける可能性もあります。まずは、経営層がダイバーシティとインクルージョンについて学び、社内教育へと結びつけましょう。

多様な働き方の推進

ITツールの発展や働き方改革の推進、新型コロナウイルス感染拡大などの影響により、時間や場所にとらわれない働き方が一般的になりました。

多様な働き方は「病気療養しながらも仕事を続けること」「都市部にいながら地方企業で働く」反対に「地方に移住した後も都市部の企業で働く」など、従業員の働きやすさを後押ししています。事情がある人でもキャリアを断絶することなく一つの企業で長く勤めることを可能にしました。

こうした労働条件の緩和も離職率の抑制、定着率向上の一助となり、ISO30414のための人的資本情報開示の11領域58項目指標の中でも注目される施策の一つです。人材を大切にし、それぞれの事情を尊重した働き方を選べるようにするためには、企業が多様な労働条件や労働環境を整えることが喫緊の課題といえます。

社内教育とキャリアアップ制度の整備

ISO30414のための人的資本情報開示の11領域58項目の中でも、従業員の学び直しを後押しし、意欲ある従業員にはキャリアチェンジやキャリアアップの道を開くことが重要な施策項目の一つとなっています。

学習や研修ツールの選定や制度の整備も大切ですが、従業員それぞれが成長のために必要とする時間を企業が提供することも大事な役割の一つです。業務の見直しや必要なときは特別休暇、特別手当などの提供も視野に入れましょう。

また、リスキリングを実行する従業員だけでなく、彼らを管理、監督するマネジメント側にもリスキリングの重要性や実行の障壁、リスキリング内容の選定などについての研修を行う企業もあります。

給与や福利厚生などの待遇の充実

ISO30414認証取得のためには、従業員が満足して働けるよう待遇を見直すことも大切です。分かりやすい評価制度や昇給なども検討、整備しましょう。ただし、評価制度や給与の見直しは一朝一夕に推進できるものではありません。

そこで税制措置でも優遇される福利厚生を充実させ、待遇を改善させるのが企業と従業員の双方にとって早急に取り組みやすくモチベーションやロイヤリティの向上につながりやすい施策です。

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ISO30414指標は中小企業でも達成可能

ISO30414の指標は人的資本経営でも密接な関係性です。中小企業が有価証券報告書への人的資本情報として記載する内容を設定する際に参考になるでしょう。また、ISO30414ガイドラインへの適合、人的資本経営の導入に際して、リスキリングや食事補助といった福利厚生の見直しが有効です。全国のさまざまな従業員が利用しやすい食事補助を取り入れるなら、「チケットレストラン」を検討しましょう。

 

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