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テレワーク・リモートワークにおけるコミュニケーションの課題と解決方法【好事例10選も / 企業名も掲載】

2022.11.29

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本記事ではリモートワーク(テレワーク・在宅勤務)におけるコミュニケーションの課題と、その解決方法をご紹介します。

厚生労働省と総務省は、テレワークとは、情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり、要するに本拠地のオフィスから離れた場所で、ICTを使って仕事をすることと説明しています。

本記事では用語「リモートワーク」を使用し、用語の意味にテレワークと在宅勤務も含めることとします。

リモートワークのコミュニケーション課題を理解する

日本の各省庁が実施した関連調査や報告でも、リモートワークにはコミュニケーション不足などから、課題が発生することが説明されています。

経済産業省調査事業によるリモートワークにおける課題の調査と報告

ここではリモートワークの課題を、経済産業省調査事業「令和3年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(テレワーク推進に資する先駆的な事例等調査研究)報告書【公表用】」をもとに解説します。

同報告書では、課題認識率の高い順に以下が記されています。以下は報告書からの引用です。

・できる業務が限られている
・従業員同士の間でコミュニケーションが取りづらい
・紙の資料・書籍が電子化されていない
・テレワークできない従業員との間で不公平感がある
・労働時間の申告が適正かどうかの確認が難しい
・勤務管理が難しい
・オフィスで勤務する従業員へのしわ寄せが生じている
・情報セキュリティの確保が難しい
・評価が難しい
・在席・勤務状況の確認が難しい

課題の上位3つは、認識している企業が多い順に「できる業務が限られている(63.8%)」「従業員同士の間でコミュニケーションが取りづらい(48.4%)」「紙の資料・書籍が電子化されていない(38.5%)」があります。

課題1:できる業務が限られている

リモートワークとはICTを使って仕事をすることです。ICTを使えない状況にある、ICTに関与しない仕事である、ICTの導入が遅れている、以上のような場合はリモートワーク自体が成立しません。

課題2:従業員同士の間でコミュニケーションが取りづらい

リモートワークとして在宅で勤務をする場合、同僚と席を隣にして働く、一言で質問できるようなことをパッと口に出して向かいの席の同僚に尋ねる、同僚などと偶然目が合ったり廊下ですれ違ったりする、休憩室などで偶発的なコミュニケーションが発生するようなことが一切起きません。

課題3:紙の資料・書籍が電子化されていない

電子化が遅れている企業や職場の場合、電子化のために出社してスキャンをする、出社をして資料を業者に出荷するなどの業務が発生し、それらの準備に携わる人はリモートワークができないことがあります。

総務省によるリモートワーク課題の説明

総務省はリモートワークとその課題について「2020・2021年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う出勤抑制の方策として、首都圏を中心に、テレワークが一時的に広く利用されることとなったものの、急遽・短期間での実施だったことに伴い、マネジメントやコミュニケーションでの問題が生じ、結果として生産性が下がってしまったとの声も聞かれます」と説明しています。

リモートワークのコミュニケーション課題と解決案

リモートワークの課題と解決策について、経済産業省調査事業「令和3年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(テレワーク推進に資する先駆的な事例等調査研究)報告書【公表用】」をもとに解説します。

課題1「リモートワークは生産性の一時的な低下やコミュニケーションが難しい」

縦横の関係性はグループウェアの活用が推奨されます。グループウェアとは、従業員同士が部署やチーム単位で連携し、コミュニケーションなどを活性化するためのサポートになる機能を有するソフトウェアを指します。メールやメッセージ機能、スケジュール管理機能、ワークフロー機能などがあり、このような機能を全般的に付帯しているもの、各機能に特化したものが存在します。機能を全般的に付帯しているグループウェアとしてMicrosoft 365、Google Workspace、サイボウズOfficeなどが有名です。各機能に特化したグループウェアとして、メールやメッセージ機能はMicrosoft Outlook、Google meet、Slack、スケジュール管理機能はLINE WORKS、ワークフロー機能はAsana、Notion、Trello®などが有名です。

課題2「企業における斜めの関係性、あるいは、新入社員や中途採用のコミュニケーションが難しい」

斜めの関係性とは、直属の上司・部下、指導者・新人といった関係性とは異なる、他部署の先輩・後輩のような関係性のことです。また、新入社員はオンライン研修や企業側で共同作業の機会を設けることがあるが、中途採用社員は周りの状況が分からず、孤立化・孤独化し、ストレスなどを抱える懸念があります。

報告書によると、とある企業では、社員食堂の食事を宅配して、昼にオンラインで接続をしながらランチ会を行い、従業員間のコミュニケーションを促進させている事例があるとされています。
このような昼食の事例だけではなく、始業前の時間を活用する事例や、ティータイムやコーヒータイムなどのお茶会を設定する事例、あるいは金曜夜の終業後に30分だけそれぞれ好みでお酒などを持ち寄り、ICTツールを活用して雑談をする機会を設ける企業の取り組みは、日本だけでなく海外の企業でも多数実施されています。

課題3「一人のマネージャーが1on1ミーティングを行おうとすると、ミーティング可能人数が今までよりも減少している」

報告書では、テレワーク環境下では、例えば5チームぐらいに分散して、そこにリーダーを設けるようにすることや、重点的に育成する人材をピックアップして、面談を行うやり方等、企業の形に合った工夫の仕方を見つけることが推奨されています。

課題4「自分から話かけられないタイプの従業員とのコミュニケーションはどのようにすべきか」

報告書では、ミーティングの際にできるだけ声をかけてあげて、意見を引き出すようにすることが推奨されています。これはリモートワークやオンラインミーティングに限らないことではありますが「声の大きい人ばかりがミーティングに参加するようなことにならないように、それぞれの特性を理解しながら、特にマネジメント側がうまく運営していくような配慮が必要」であると説明されています。

課題5「社内または顧客や取引先等とのコミュニケーションを円滑にする工夫があれば教えてください」

報告書では、SNSの利用も推奨されています。回答企業の事例(報告書スライド41、報告書39ページ)ではクラウド型ビジネスチャットツールであるLINE WORKSの利用が紹介されています。このツールを活用することで「リアルタイムでやり取りしなくてもツールを見ると分かる」「伝えたいことはツール上に書いておくと、『既読』の有無で読んだか、読んでいないか分かる」のだそうです。

リモートワーク・テレワークのコミュニケーション課題を解決した企業の好事例10選

各省庁などの資料で紹介されている事例を中心に、リモートワークにおけるコミュニケーション課題とその解決を実施した事例を紹介します。紹介企業は順不同でご紹介しております。

向洋電機土木株式会社

2008年に時間的制約のある従業員の採用をきっかけとして、2008年1月から在宅勤務制度を導入した同社。初回テレワークの開始前に、面談と、エゴグラムや性格分析手法を実施し、それらが示す個人の特性を参考にして、従業員の一人ひとりと面談を行っているとしています。(参考

カルビー株式会社

2009年の経営刷新、2010年のダイバーシティ委員会発足、営業職の残業の多さ等の改善策としてモバイルワークの開始、2011年以降には東日本大震災をきっかけに残業時間削減のため本社でサマータイムが導入され、2014年4月より在宅勤務制度を本格導入しています。(参考

同社はコミュニケーションのきっかけとなる場づくりに力を入れており、月に2回社内外のゲストからユニークなキャリアやビジネスについて学ぶ場である「Calbee Learning Café」、カルビーを副業として勤務するスペシャリストを採用することでアイデアの壁打ちが実施できる「カルビっとワーカー」、普段お会いしない生産者さんのコンテスト出品を社内からサポートする「『にっぽんの宝物』への社員派遣」、異業種オフィスシェアで自身のリーダーシップ開発をする実験的取り組みである「Open Working」などの取り組みも実施しています。(参考

株式会社SiM24

同社は2005年にパナソニック株式会社の社内ベンチャー制度により設立された企業であり、創業時から完全在宅勤務制度(全く出社をしない在宅勤務)を導入しています。創業にあたり、優秀な女性技術者たちが仕事と出産・育児の両立に悩み、退職を余儀なくされてきた現実が会社にとっても社会にとっても大きな損失であると考えたといいます。

シスター制度・5人組制度を設けており、「シスター制度」は1人の新人に1年間1人のアドバイザー役の従業員が付き、困ったことや疑問点をアドバイザーに聞くことができる制度、「5人組制度」は解析の専門分野ごとに5人1チームで互いにフォローアップする制度です。(参考

株式会社INAP Vision

同社は2016年3月の設立当初より、育児や介護と仕事の両立のためにリモートワークを導入していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、テレワーク制度を本格導入し、リモートワークの対象者を拡大・推奨しています。

バーチャルオフィスを活用することで、会社と同様に対面のように気軽に会話や会議を実施しているほか、ライトニングトーク(LT)をプレゼン形式で定期的に行うことで、個人のスキルアップと、部署を超えたコミュニケーションのきっかけとしています。(参考

エヌ・ティ・ティ・データ先端技術 株式会社

全社員をテレワーク制度の対象とし、テレワークPCおよびスマートフォンを貸与しています。Web会議ソフトやコラボレーションツールのアカウントも全社員に付与し、社員同士が気軽にコミュニケーション、情報共有ができる環境を整備。

月1回業務後に、趣味などの各テーマ別に希望者を対象としたオンライン交流会を開催したり、新卒社員向けには、4~6月の間、週2回、各30分程度、新卒社員や人事担当社員と雑談ができるオンライン交流会を開催したりと、社員の希望やフェーズに合わせた細やかな対応を実施しています。
またオフィスはフリーアドレス化し、空いたスペースを活用してコラボレーションスペースを設定、社員のコミュニケーション促進につなげているといいます。(参考

株式会社オークネット

オフィスのフリーアドレス促進、コミュニケーションスペースの充実だけではなく、Panopto動画プラットフォームの導入により、オンライン研修の主催者参加者双方の負担軽減や知識共有のスピードを加速しています。(参考

学びの方法や機会・量などを見直すことにより、社員同士の交流や意見交換が活発化し、コミュニケーションが生まれることもあるでしょう。

カンロ株式会社

インナーコミュニケーションツールとして社内専用SNSアプリ導入し、本社ではオフィス座席管理ソフトを導入しています。(参考

同社はリモート転勤制度を導入し、異動先が常時テレワークが可能な場合は転居を伴わない転勤を可能としました。それにより、単身赴任者が自宅や家族と離れることが無くなり、地方の人口減少の歯止めや単身生活による健康影響(食生活・生活の乱れ等)の向上等の社会的効果にも寄与できると期待しています。

株式会社GameWith

ICTを活用、人事労務系の書類はペーパーレス化し、入社手続きから労働条件変更、評
価制度のFB対応など、全てオンラインで対応できる体制を整えました。人事制度はリモートワークに合わせて調整し、アウトプット(成果)重視の評価や、高い成果に対する短期間での評価及び報酬への反映+その他今後の経営方針に伴う調整、また月一の進捗MTGを行い、リモートワーク化でも進捗を把握できるような仕組みに変更しています。

またオフラインオフィスには完全密封型テレブースや簡易型テレブースを設置、在宅勤務と出勤者をつなぐスペースを設けました。

関係者同志の打ち合わせにもオンラインツールを活用し、対面の際は大勢での打ち合わせは避け、社内外での面談の際にはマスクを着用し、参加者と一定距離を保ち、短時間で終了するように努めているといいます。参考

株式会社なゆたネット

同社は従業員への福利厚生における課題として、福利厚生パッケージサービスを導入していたが、ほとんど利用されていなかったこと、仕出し弁当による昼食補助を実施していたが、新型コロナウイルス感染症以降は在宅勤務者が利用できず不平等だったことから、食事補助サービス「チケットレストラン」の導入に至りました。

すると在宅勤務や出向など、多様な勤務形態でも平等に福利厚生を提供できるようになり、福利厚生の利用率が、ほぼゼロであったところ「チケットレストラン」を導入した結果、90%の利用率にまで向上。全員が利用する福利厚生制度の制定に大きく近づきました。(参考

日本エア・リキード合同会社

産業・医療ガスの製造販売を行う同社は、リモートワークの導入に伴い、従業員をリモートでもケアできる非課税の手当として利用できるサービスを探していた中で、食事補助サービス「<チケットレストラン」を導入しました。利用率が高く、導入を決定した企業担当者も驚いているといいます。

サービスの利用開始に伴い、利用できる加盟店を共有する社内掲示板も作成され、そこでは社員の皆様のコミュニケーションが発生しています。

終わりに

リモートワークでは各社でコミュニケーション課題が発生しています。しかしながら、リモートワークは1973年頃にアメリカ・カリフォルニア州・ロスアンゼルス近郊でエネルギー危機、マイカー通勤による大気汚染緩和を目的として開始されており(参考)、日本では1984年9月に日本電気株式会社(NEC)「C&Cサテライトオフィス」を吉祥寺に開設、これは日本および世界においても初めてのサテライトオフィスの試みでした。(参考)つまりリモートワークは、2019年の新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに急速に普及しましたが、特別新しいものではないことから、各社が試行錯誤した歴史や事例が多数存在しています。リモートワークにおけるコミュニケーション課題も、皆様の会社でもきっと解決できるでしょう。

解決策には、ツール導入やランチタイムなどを活用するコミュニケーション機会の増加など、いくつかの手法があります。ぜひトライアルとしての導入なども検討してはいかがでしょうか。

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