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【社労士監修】公務員は扶養手当をもらえる?その金額や条件、共働きの場合など

2022.09.26

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監修者:森田修(社労士事務所 森田・ミカタパートナーズ)

公務員として採用されたけれど、扶養手当ってもらえるの?
共働きで子どもがうまれたら?親を養うことになったけど……。

生活していく上で養われる立場から養う立場に変化していくと、様々な知らないことが出てきます。
扶養手当の支給は、一般企業では企業の裁量に任されており法的な定めはありません。

しかし、公務員の場合は、明確に法律で定められています。
本記事では、公務員における扶養手当の支給要件や支給金額について詳しく解説していきます。

公務員における扶養手当とは?

公務員における扶養手当とは、扶養親族のある職員に対する生活補助を目的とした手当です。

養うべき親族(扶養親族)が増えると生活費も増えます。それによる生活費の負担を緩和するために支給されるものが、扶養手当です。

扶養手当は毎月の給与の他、賞与などにも影響してきます。自動で支給されるものではなく、自分で届け出をしないと支給されません。

また、扶養親族はどんな親族でもよいというわけではなく、手当支給を受けるためには

・所得
・同居、別居
・続柄

などによりそれぞれ支給要件が定められています。

公務員には国家公務員と地方公務員がありますが、地方公務員の扶養手当に関しても、
おおむね国家公務員の規定に準じた形で決められています。

公務員の扶養手当の支給要件

前述で扶養手当の支給を受けるためには・所得・同居別居・続柄などの定めがあることをお伝えしました。

前提条件として、以下2つを満たしていることが必要です。

(1)他の生計の途がなく主として職員の扶養であること
(2)あらかじめ規定された続柄・年齢等に該当すること

他の生計の途がないというのは、生計を立てられる収入がないこと。具体的な目安は年収130万円未満になります。

主として職員の扶養であるとは、他の人の扶養になっていないことです。
複数人で扶養している場合、主として生計を維持している扶養者ではないのに届け出を出してしまわないよう注意してください。

職員が扶養している親族が、別居の場合は、生計の1/3以上を補助していることに加え、生計を支えるだけの仕送りを証明する必要があります。

(1)と(2)の前提条件のもと、公務員の扶養手当の支給要件についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

妻(配偶者)の支給条件

配偶者の支給については、前提条件である「主として職員の扶養であること」「年収が130万円未満であること」を満たしていれば扶養家族と認められます。
内縁関係の配偶者についても同様です。

ただし、内縁関係が認められるためには「婚姻の意思」と「夫婦同然の共同生活」などが判断要素に含まれるため、別居の場合には内縁関係の認定が難しくなることも考えられます。

子どもの支給条件

子どもの支給に関しては「満22歳到達後最初の3月31日まで」という年齢の決まりがあります。人数の制限などはありません。

例えば「孫が生まれたが、生計を維持することが困難」な場合、職員は孫についても扶養親族とすることが可能です。
孫を扶養する場合の支給要件も子どもと同様「満22歳到達後最初の3月31日まで」になります。

昨今では子連れ再婚することも珍しくありません。連れ子に関しては、養子縁組していれば扶養手当の対象です。

親の支給条件

父母を扶養親族とするためには、父母の年齢が満60歳以上であることが必要です。
扶養親族にするのは、母親のみまたは父親のみでもかまいません。

例えば、父親に収入があっても、母親を養うほどではなく主として職員が母親を扶養している状態であれば、母親のみ扶養手当の対象として届け出をすることが可能です。

父母に加えて、祖父母についても満60歳以上であれば父母と同様に扶養家族として届け出を出すことが認められています。

その他認定される条件

配偶者・子・孫・父母・祖父母の他に扶養親族として認定される条件には、弟妹や重度心身障害者があります。
弟妹については子や孫と同様に「満22歳到達後最初の3月31日まで」です。

重度心身障害者については、年齢や続柄は問われません。主として職員がその生計を維持し扶養していれば扶養親族として年齢等の制限もなく認められます。
重度心身障害とは例えば寝たきりや、日常生活を自力で送れないほどの状況であることを指しています。

扶養手当が支給されない条件

扶養手当が支給されない条件には以下のようなケースがあります。

・被扶養者の年収が130万以上の見込みである場合
・公務員である職員が主な扶養者でない場合
・他の人の扶養手当の支給対象者になっている場合

例えば、失業した親族を扶養しようとする場合、基本手当(失業手当)の受給が月額108,333円以上受け取っていた場合は、年収130万未満(12か月で割ると月108,333円となる)を超えてしまうことから扶養親族としては認められません。

逆に言えば、月額が108,333円未満であれば基本手当(失業手当)を受け取っていても職員が主として扶養していれば、扶養手当が受け取れることになります。

他には、複数人で扶養している場合に主な扶養者が公務員である職員でない場合があげられます。

例えば、長男、次男、三男の3人兄弟で母親を扶養しているとします。長男が母親の生計の1/2を負担し、残りの1/4ずつを次男と三男で負担することにしました。

この場合、主たる扶養者は長男です。公務員である職員が次男、三男のどちらかであった場合は生計を助けていたとしても、扶養手当の対象にすることはできません。公務員である職員が長男であれば可能です。

また、共働きで、一般企業の夫と公務員の妻などのケースの場合、夫の会社に扶養手当があり、子どもの扶養手当を受け取っているならば、両方で受け取ることはもちろんできません。

公務員の扶養手当の支給金額はいくら?

公務員の扶養手当は実際いくらなのか見ていきましょう。
以前は配偶者に対して手厚い金額設定がされていましたが、最近では子に対して重点的に支給されるようになりました。
ここでは、それぞれの扶養親族にわけて支給金額を説明していきます。

基本的には子に対しては10,000円、子以外は6,500円です。

その他に役職により支給金額が変わる、年齢によって支給金額が増額されるなどがありますので、ポイントを確認していきましょう。

配偶者(内縁含む)の支給金額

配偶者(内縁含む)の支給金額は6,500円です。
ただし、職員の役職によって金額が変わります。
具体的には、行政職8級相当の職員は3,500円、9級以上になると0円です。

配偶者の扶養手当は、2016年時点では月に13,000円の手当が支給されていました。段階的に減額され、2018年に現在の6,500円となっています。

子どもの支給金額

子どもの扶養手当の支給額は一人につき10,000円です。

子どもの扶養手当にはさらに特定期間が設けられており、満15歳に達する日後の最初の4月1日から満22歳に達する日以降の最初の3月31日までは5,000円が上乗せ支給されます。

ざっくりといえば16~22歳までは1人につき15,000円支給されるということです。
ただし、子どもに関しても年収130万円未満であることが条件ですので、アルバイトなどで収入が多くなりすぎると、扶養手当の対象外になります。注意しましょう。

忘れがちなのが、子どもが就職した時です。そのまま受給し続けてしまうと不正受給になりますので、速やかに届け出を出すようにしてください。

配偶者の支給金額とは逆に子どもの支給額は、2017年度に8,000円、2018年度には10,000円と増額されています。このことからも近年、子どもに対して重点的に支給されるようになってきていることがわかります。

親や祖父母ほかの支給金額

子ども以外の扶養手当対象者である「親」「祖父母」「孫」「弟妹」「重度心身障害者」に関しては、支給金額は1人につき6,500円。配偶者と同様の支給になります。
役職に応じて行政職8級相当の職員は3,500円、9級以上になると0円となるのも配偶者と同じです。

共働きや育休中の場合の扶養手当は?

かつては結婚すると女性は専業主婦として家庭を守り、男性が家族を養うといったケースが主流でした。
現在では共働きの家庭が当たり前になってきています。女性の年収が高い場合も珍しくありません。
ここでは、共働きの場合の扶養手当はどのようになるのか、また育児休暇を取得した場合、子どもの扶養手当はどうなるのかを詳しく見ていきましょう。

共働きの場合の扶養手当は

扶養手当を考える際の「共働き」とは夫婦がそれぞれ健康保険の被保険者であり、お互いに共同で生計を維持している状態を言います。
共働きの場合、扶養手当は夫婦間の年収差の割合を基準に判断します。

・年収の差額が1割以内の場合:主として生計を維持する者が扶養する
・年収の差額が1割以上の場合:年収が多い方の者が扶養する

一般企業の扶養手当は企業の裁量により決められるため、好条件となっていることがあります。年収の差額が1割以内でどちらも同等のバランスで生計を維持している場合、どちらの扶養にするかは、扶養控除や社会保険などで受けられるメリットも合わせて検討しましょう。

育休中の場合、子どもの扶養手当はどうなる?

次に育休中の子どもの扶養手当がどうなるのかみていきましょう。

昨今では男性(夫)も育休を取得するようなってきましたが、ここでは夫が一般企業、妻が公務員で育休を取得中であることを前提に見ていきます。

前述で子どもの扶養は夫婦のうち収入の多いほうに基本的には入れるとお伝えしました。子どもが夫の扶養に入っている場合は、そのまま変更はありません。

妻の扶養に入っている場合は、育休中に妻の収入がなくなるため子どもの扶養が外れてしまいます。その場合は夫の扶養に入れることも可能です。
妻が復職し、収入が増えたら再度子どもの扶養を妻に戻すこともできます。

ただし、ここで注意しなければならないのは、夫の会社の規定です。一般企業の場合、扶養手当の要件は企業によって異なります。扶養手当の要件に社会保険の扶養に入ることが前提となっている場合は、妻の保険に入ったままでは支給されないことがあります。

また、公務員の妻の場合、産休中は給与が満額支給され、子どもが1歳になるまでは育休手当金が支給されるので、子どもが満1歳をむかえた時点で扶養にいれることが多くみられます。

扶養手当の手続きや届け出方法

扶養手当は届け出しなければ受け取れないものです。任命債権者の認定を受けることで支給開始されます。届け出を忘れてしまった場合、さかのぼって支給されることはありません。扶養手当の手続きや届け出方法について確認していきましょう。

まず、届け出の事実が発生した後、速やかに届け出を提出します。
具体的には翌日から起算して15日以内に提出してください。

支給開始については
・月の初日(つまり1日)に要件が十分に備えられた場合→当月支給
・月の途中で届け出がなされた場合→翌月支給
となります。

届け出を忘れた場合にさかのぼって支給されないと前述でお伝えしましたが、根拠は給与条例により

事実の生じた日から15日を経過した後にされたときは、その届け出を受理した日の属する月の翌月(その日が月の初日であるときは、その日の属する月)から行うものとする。
一般職の職員の給与に関する法律(第十一条の二 2)

と記載されていることからです。届け出した翌月からしか支給されません。

逆に支給の要件を欠いた場合にも届け出が必要になります。届け出を忘れて手当を受給し続けると不正受給になりますので注意しましょう。

公務員の扶養手当が見直しされる?

公務員の扶養手当はこれまでも段階的に見直されてきています。
特に配偶者の扶養手当については、世の中の変化により夫婦共働き家庭が主流になってきていることや、生涯未婚率の上昇にともなう不公平感などから、今後もさらに見直される可能性があります。

働き方改革でも課題となっている女性の就労促進も理由のひとつとしてあげられます。
扶養手当の要件として年収の上限が設けられているため、就労調整が行われがちです。
女性の就業抑制につながり働き方改革の足かせとなりかねません。働き方改革の観点からも配偶者の扶養手当が見直される可能性があると言えます。

別の角度からみると、人口減少により税収が減っていることも見直し要素の一つになります。
公務員の給与は国民の税金の中から支給されています。財源が減れば手当等の見直しが必要になるのは必須です。

とはいえ、現在扶養手当を支給されている家庭にとって、扶養手当が見直されることは、毎月の給与だけでなく、賞与なども減額されることになります。廃止された時に慌てぬよう家計を見直し、準備しておきましょう。

さいごに

公務員においても要件を満たせば扶養手当が支給されます。自動でもらえるものではなく届け出をしなければ支給されません。知らずにもらえなかったということがないよう忘れずに届け出をしましょう。
また、扶養手当の要件が消滅した場合も届け出が必要です。不当利得にならぬよう制度を理解し、きちんと届け出を。
毎月の給与だけでなく賞与にもかかわる扶養手当。正しく理解し活用していきましょう。

【参考資料】
扶養手当の運用について(昭和60年12月21日給実甲第580号)/人事院

国家公務員の諸手当の概要/人事院

人事院規則九―八〇(扶養手当)/人事院

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