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【社労士監修】福利厚生費の飲食における上限は?会議費や交際費との違いも

2021.07.20

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)


福利厚生費や会議費、交際費。企業で支払う飲食費の経理処理について迷うことはありませんか?

仕事に関連する飲食費用は処理の仕方で税法上の扱いが変わってきます。限度額など明確な境界線はあるのか、飲食に関連する仕訳のポイントや要件などを、わかりやすくまとめて解説していきます。

飲食や食事補助における福利厚生費

福利厚生制度には、国が義務付けている「法定福利厚生」と企業がそれぞれに備える「法定外福利厚生」の2種類があります。「法定外福利厚生」にかかる経費を「福利厚生費」といいます。ここでは福利厚生費の中でも飲食に関連する項目についてみていきます。

上限金額について

福利厚生費 上限

福利厚生費のうち、通勤手当(通勤費)や食事補助を除いては、明確な上限は定められていません。全従業員が対象となっている、現金支給でないなど一定の要件をみたせば、法定外福利厚生制度の費用は福利厚生費として損金計上できます。その上限は、「社会通念上、著しく高額でないもの」というあいまいな設定であることがほとんどです。

福利厚生費の中でも食事補助の上限については、後ほど詳しく解説します。

会議費と交際費と福利厚生費

飲食費用における「会議費」「交際費」「福利厚生費」の区別は混同しやすいものです。大まかにそれぞれがどんなものかを説明します。

福利厚生費 飲食

(1)会議費
社内または通常会議を行う場所において通常の昼食程度を供与する費用のこと。明確な上限はありませんが、1回あたりの金額は常識的な範囲内(昼食程度)とされています。場所や相手によっても許容範囲が変わってきます。

(2)交際費
仕入先や取引先などに対する接待・供応・慰安・贈答などに支出する費用のこと。社内の人のみの参加で一人あたり5,000円以下であれば経費となります。中小企業(資本金が1億円以下で、資本金5億円以上の法人の100%子会社ではない法人)の場合、800万円までは経費として計上可能です。大企業の場合、飲食費にかかる部分の交際費の50%を経費とすることができます。

(3)福利厚生費
社内行事などで、従業員の労をねぎらうためにおおむね一律で提供される通常の飲食費用のこと。食事補助以外の飲食費用は社会通念上著しく高額でない限り経費として計上可能です。

飲食費においては、誰を対象に何の目的で支出されたものかによってその仕訳や課税区分が異なってきます。それぞれの費用を正しく処理している証拠として飲食代の領収書とともに、日付・参加者・参加者数・内容などの明細を保存しておきましょう。

個人事業主の場合

企業における交際費は一人当たり5,000円以下であれば会議費として処理できます。

個人事業主の場合は、業務上必要不可欠なものであれば、5,000円という上限はなく必要経費として費用計上可能です。個人事業主が交際費を計上するにあたっての注意として、

・個人的な支出と業務関連の費用との線引きを明確にしておくこと
・領収書には目的・日時・場所・参加者を明確にしておくこと
・支出が会社規模や事業内容から妥当な金額・回数であること

などがあげられます。

事例別に見る福利厚生費

福利厚生費 食事補助

食事補助

食事補助(※1)を福利厚生費として計上するためには以下の要件を満たす必要があります。

(1)役員・従業員が食事代金の半分以上を負担していること
(2)企業が負担する金額が3,500円以下であること

(1)の要件が満たされない場合は、食事の価額と従業員負担額との差額が給与課税対象です。
このような場合は社会保険に関しても注意が必要です。給与課税と社会保険の報酬とでは少し相違があるためです。社会保険では、食事を現物給与として扱われる場合があります。                                    食事の給与は、その実費を徴収するときは、標準価額と徴収する金額との差額を報酬として算定しますが、従業員から徴収する金額が標準価額の3分の2以上の時は算定しないこととなっています。

具体的な数字で説明します。
東京の標準価額は1月あたり21,600円です。東京の会社で、食事は提供するが従業員から食事代を徴収していない場合は、この21,600円を現物給与とみなして報酬に算定します。
この時に従業員から食事代として15,000円徴収している場合は、現物給与の価額(21,600円)の3分の2(14,400円)を上回るため、現物給与は支給していないことになります。

これに対して従業員から食事代として月額5,000円を徴収しているとすると、現物給与の価額の3分の1との差額(7,200円-5,000円=2,200円)を、現物給与の価額として、賃金総額に算入することになります。

また、現金で食事補助を行う場合は補助する全額が給与として課税されます。福利厚生費として認められる食事補助の要件には、2つの例外があります。

残業や宿日直の飲食費

1つ目の例外は残業や宿日直における食事代です。国税庁のサイトでは、

使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。

(所得税基本通達36-24)(※2)と記載されています。

残業や宿日直において提供される食事は「現物支給の場合に限り」、従業員に無料で提供したとしても、給与課税しなくてもよいということです。現物支給でない場合は給与課税の対象になります。
しかし、社会保険では夕食のみの1人1日当たりの標準価額がきまっており、この価額を基にし、従業員から徴収する金額が3分の2以上の時は報酬として算定しないこととなっています。

深夜勤務者の夜食

2つ目の例外は深夜勤務者における食事の提供についてです。国税庁のサイトでは、

深夜勤務者(労働協約又は就業規則等により定められた正規の勤務時間による勤務の一部又は全部を午後10時から翌日午前5時までの間において行う者をいう。)に対し、使用者が調理施設を有しないことなどにより深夜勤務に伴う夜食を現物で支給することが著しく困難であるため、その夜食の現物支給に代え通常の給与(労働基準法第37条第1項《時間外、休日及び深夜の割増賃金》の規定による割増賃金その他これに類するものを含む。)に加算して勤務一回ごとの定額で支給する金銭で、その一回の支給額が税抜300円以下のものについては、課税しなくて差し支えないものとする。

(直法6-5直所3-8)(※3)と記載されています。

深夜勤務者に対して「1回300円以下」であれば食事代を現金で支給しても福利厚生費として非課税扱いにできるということです。
しかし、社会保険では先ほどの例外同様夕食のみの1人1日当たりの標準価額がきまっており、この価額を基にし、従業員から徴収する金額が3分の2以上の時のみ報酬として算定しないこととなっています。

社内イベントや親睦会

昼食や夜食のような食事代については、前の項目でそれぞれ確認しました。では、従業員の慰労を目的とした忘年会などの社内イベントや親睦会におけるいわゆる「飲み会」のような飲食はどうなるのかをみていきましょう。

福利厚生費として社内イベント等の飲食費用を計上するには以下の要件がポイントとなります。

(1)全従業員を対象としていること
(2)社内の人だけで行われていること
(3)1人あたりの金額が通常要する飲食費用の範囲内であること

部署単位で実施したとしても、全部署が対象となり1人あたりの金額に大きな差がなければ福利厚生費として問題ありません。著しく高額であったり、特定の人のみで行われたり、社外の人が参加したりする場合、またイベントが全社員強制参加の場合は、交際費や給与として処理することがあるので確認が必要です。

最後に

飲食における経理処理ではその目的や対象によって「福利厚生費」「交際費」「会議費」の区別がされます。混乱しやすい項目ですが、正しく処理を行うことで節税対策にも役立つ大切なポイントです。それぞれの要件を確認し、経費の区分を明確に仕訳していきましょう。

<参考資料>
(※1)No.2594 食事を支給したとき/国税庁
(※2)〔給与等に係る経済的利益〕(課税しない経済的利益……残業又は宿日直をした者に支給する食事)/国税庁
(※3)深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて/国税庁

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